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新境地のパワープレーで1回戦突破。
錦織圭、1年前との“心変わり”とは。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2015/06/30 11:25
芝コートではより大きな比重を持つサービスゲームを、しっかりキープした錦織圭。ビッグサーバー優位のウィンブルドン仕様の戦い方を発見することはできるか。
堅実というよりも空回り、一本調子という印象。
初戦、確かに錦織のサーブは効いていた。エースは相手を上回る14本。ファーストサーブ時の得点率は74%、セカンドサーブになっても68%と高い確率でポイントをもぎ取った。
サーブだけではない。ストロークは前哨戦のハレ(ドイツ)から好感触を維持している。サーブで押し、グラウンドストロークでさらに押す。息をつく暇もない連続攻撃が相手を苦しめた。
第3セットまで、錦織はサービスゲームをすべてキープした。結局、サーブを落としたのは第4セット1-2で迎えたゲームだけ。逆に、相手のサービスゲームは5度もブレークした。
だから、圧勝してもおかしくない試合だったのだ。ところが、5セットにもつれる大苦戦。結局、決着をつけるまでに3時間22分を要した。第1、第3セット、そしてファイナルセットは相手を圧倒したが、第2、第4セットは失速した。
サーブを軸にパワープレーで押そうとしているのに、最後まで押し切れない。ラリーのアンフォーストエラーは25本で特別多かったわけではないが、堅実なプレーをしたという印象は薄い。むしろ空回り、あるいは一本調子という印象だ。
芝コートでアグレッシブに仕掛けるのは正しいが……。
球足の速いグラス(芝)コートだけに、よりアグレッシブなプレーを心がけるのは正しい。しかし、その精度にばらつきがあった。試合後の会見で、「打ち急いだのか」という質問に錦織はこう答えた。
「こういうプレーを心がけているので、ミスをしたとしても経験というか……。もうちょっと前に出たりしてプレッシャーをかけられたらよかったが、今日はそこまでできなかった」
英語の質疑では「サーブ、そして集中力にアップダウンがあった」と振り返った。集中力についてあらためて日本語で問われると「こういう試合がいくつかあるので、自分の悪いところというか、集中力を保つというのは直していかなくてはいけないところだと思う」と正直に答えた。