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「縦に速い攻撃」を勘違いしている?
福西崇史が語る、ハリルJの課題とは。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/06/11 11:25
新体制でまだ2試合しか経験していない日本代表。6月のW杯予選、そして8月の東アジアカップと、これから真価が問われていくことになる。
「縦に速い攻撃」は横への揺さぶりで生きる。
この試合で78分に生まれた先制点は、まさに「縦に速い攻撃」によるものだった。
相手のパスミスを拾ったDF吉田麻也がダイレクトで右サイドバックの酒井宏樹にパス。タッチライン際で酒井がタメを作り、サポートに入った長谷部誠に落とす。これを長谷部がダイレクトで縦に入れ、クサビに入った岡崎が2タッチで香川に預ける。前を向いた香川はドリブルでボールを運び、左側を並走した本田に展開。パスは膨らんだが、本田のクロスに岡崎が飛び込み、ファーポスト際のヘディングシュートで押し込んだ。
「ダイレクトで縦パスを通した吉田の判断、戻りながらパスを受けた酒井のタメ、それから長谷部の縦パスと岡崎のクサビ。ここまでの流れにテンポがあったし、スピードがありました。香川と本田に、相手が手薄な状態で前を向かせることができれば、当然ゴールの可能性は高まる。本田や香川が入って横の揺さぶりをかけたからこそ、“縦に速い攻撃”が生きたと思います」
となると、ゴールを奪うために重要なのは“縦に速い攻撃”を極めることではなく、縦と横の攻撃を持ち、その組み合わせによって相手を揺さぶることにある。
「それは間違いない。“縦に速い攻撃”というのは、決して縦方向にだけ速いことを意味しているわけではないし、時間的な“速度”のことを意味しているわけでもありません。何より重要なのは、判断のスピードを上げること。その瞬間、ゴールを奪うために最適な選択肢を選ぶことが求められているわけです」
最も「効率的な選択」をいかに迅速に判断するか。
例えば、ハーフウェーライン上にいる自分とゴールを結ぶ約50メートルの最短コースがある。しかしそのライン上に10人の相手がいたら、そこを縦に突き進むことが“最短”や“最適”ではない。“縦に速い攻撃”を仕掛けるために求められているのは、縦パスや横パス、時にはバックパスを組み合わせながら、その状況で最も「効率的な選択」をいかに迅速に判断し、正確に実行するかということにある。
「『縦に速い』という言葉がひとり歩きしている印象がありますが、本質的に問われているのは『いかに効率的に攻めるか』ということだと思うんです。そのためには、いろいろな攻撃パターンを持つ必要があるし、いろいろな選択肢の中から最適な答えを判断する力が求められます。
おそらくハリルホジッチ監督は、その選択肢の一つとして、今の日本代表に“縦に速い攻撃”が不足していると考えたのでしょう。だからこそ、あれだけ強く意識付けしているのだと思います」