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「縦に速い攻撃」を勘違いしている?
福西崇史が語る、ハリルJの課題とは。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/06/11 11:25

「縦に速い攻撃」を勘違いしている?福西崇史が語る、ハリルJの課題とは。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

新体制でまだ2試合しか経験していない日本代表。6月のW杯予選、そして8月の東アジアカップと、これから真価が問われていくことになる。

ゴールを奪うために最も効率的なスタイル。

 かつてポゼッション・スタイルで全盛を極めたバルセロナでさえ、今シーズンはメッシ、スアレス、ネイマールの「たった3人で点を取れるチーム」を作り上げた。もちろん飛び抜けた個の力による打開力も影響しているが、ポゼッションの中心的存在だったシャビがレギュラーから外れたこともスタイルの変更を象徴している。チャンピオンズリーグの制覇を含む3冠達成は、「縦に速い攻撃」に優れたバルセロナが成し遂げたと言っていい。

 もっとも、このスタイルを実践しているのはバルセロナだけではない。多くのチームが「ハイプレス」と「ショートカウンター」を狙う縦に速い攻撃を実践する現状には、もはやポゼッション・スタイルへの対応策としてだけではない有効性が期待されていることを見て取れる。福西が言う。

「テンポ良くパスを回して相手を崩し、ゴールを決める。サッカーの理想型が、“美しく勝つ”というポゼッション・スタイルにあることは間違いないと思います。でも、それができるのは本当に限られたチームで、時間をかけてチームを作り上げたからといって実現できるものじゃない。サッカーは相手との勝負だから、目的はあくまでゲームに勝つこと。そのためにゴールを奪うこと。ゴールを奪うために最も効率的なスタイルは何かと考えれば、“縦に速い攻撃”が有効であることは分かります」

3月の試合に見る、ハリルホジッチ監督の意識づけ。

 より高い位置でボールを奪えば、相手の守備組織が整っていない状態で攻撃を仕掛けることができる。スペースも十分にあるから狙いどころは多く、前を向いて仕掛けられるから相手にケアされにくい。「相手が構える前に攻める」という考え方は、確かに最もゴールを奪いやすい攻撃方法と言える。

 日本代表を率いるハリルホジッチも、おそらくその意識を植え付けようとしているのだろう。3月に行なわれたチュニジア、ウズベキスタンとの親善試合でも、そうした意識付けは選手たちのプレーから十分に伝わってきた。

「特に分かりやすかったのが、1戦目のチュニジア戦ですね。若い選手や代表に加わったばかりの選手が多く出場した前半は、これでもかというほど“縦に速く”を意識した攻撃を見せた。でも、香川真司や本田圭佑、岡崎慎司が出場した後半は、その雰囲気が変わりました。つまり“つないで攻める”と“速く攻める”のメリハリがついて、相手を揺さぶれるようになり、それがゴールにつながりました」

【次ページ】 「縦に速い攻撃」は横への揺さぶりで生きる。

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