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リーグ6位の打率と、少ない三振。
青木宣親が確立した「打撃スタイル」。
posted2015/05/29 11:35
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
青木宣親の勢いが止まらない。
現在、サンフランシスコ・ジャイアンツは外野手が5人もいる「過当競争」の状態。5月は青木も先発を外された試合もあった。5月23日からは5試合続けて先発起用されており、「当選確実」の状態ではあるものの、まだレギュラーが確定した状態とは言いがたいものがある。
立場は、微妙だ。
しかし、そんな状況下で青木は見事な仕事ぶりを見せている。
現地時間の5月27日現在、月間打率は3割4分1厘、出塁率は4割に達した。ジャイアンツのブルース・ボウチー監督からしてみれば、好調の青木を外す理由が見つけられない。このままの状態を保てば、「正左翼手」を勝ち取るのは時間の問題だ。
そして、青木の「価値」を表す強力なデータはまだあるのだ。
「クオリティ・アット・バット」という発想。
今では日本でも、先発投手が6回を自責点3以内で抑える「クオリティ・スタート」という言葉、発想が定着しようとしている(ただしNumber878号、「黒田博樹とカープの伝説」の取材で、ドジャース、ヤンキースのマウンドを守ってきた黒田本人に話を聞いた時には、メジャーのように中4日ではなく中6日の日本では、より質の高い投球が求められると話していた)。
アメリカでは明確な定義はされていないものの、好投している投手に対して、たとえ凡打に終わったとしても、打席で粘り強い内容を見せた場合、実況や解説者が「クオリティ・アット・バット」という表現を使う。
かつて、青木はミルウォーキー・ブリュワーズでプレーしていた時、監督から「相手の先発が球数少なく中盤を迎えているので、少なくとも5球以上は粘ってくれないか?」というリクエストをされたことがあるという。その打席、青木は出塁することは出来なかったが、ダグアウトに戻ると「グッジョブ」と声をかけられたという。