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黒田博樹が激怒した本当の理由とは。
内角球には「自覚と技術」が必要だ。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/05/01 10:30

黒田博樹が激怒した本当の理由とは。内角球には「自覚と技術」が必要だ。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

黒田博樹の日本復帰のお祭り騒ぎは一段落した。しかし今回の内角騒動は、彼の存在から日本球界が学ぶべきものが無数にあるということを再確認させてくれる事件だったのではないだろうか。

投手として、内角を攻めるときの絶対の鉄則とは。

 2日後の4月27日。改めて騒動に関して聞かれた黒田は、藤浪に対してこんなコメントをしている。

「謝ってもらおうとは思っていない。一生懸命戦う中で起こったこと。次に対戦すれば、思い切り腕を振って投げてくればいい。僕も頭に当ててしまったことがあるし、いろいろ経験してきた。それを乗り越えないと強くなれない」

 読み取れるのは藤浪に対して、気にせず次に対戦するときも思い切って投げ込んでこい、というエールである。ただ同時にこのコメントには、投手として、内角を攻めるときの絶対の鉄則が述べられているのである。

「思い切って腕を振って投げてくればいい」

 実は問題となった藤浪の2つのボールは、明らかに技術的な未熟さが生んだものだったのである。

「バントをやらせようと思って、しっかりと投げないまま(バントを守備に入るために)先に走り出してしまった。それでああいうボールになってしまった」

 事件当日の試合後の藤浪のコメントである。

一番危険なのは、意思のないボール。

 以前、このコラムで広島・前田智徳外野手がヤクルトの江村将也投手の内角攻めで左尺骨を骨折したことから、内角を攻めるための投手の資格に関して書いたことがある。そこで書いたのは、内角へのボールで一番危険なのは意思のないボールだ、ということだ。投手がボールをきちっとコントロールするためには、腕を振って、最後まで指先にボールをかけて意思のこもったリリースをすることがポイントなのである。

 特に右投手が右打者、左投手が左打者の内角にボールを制球するには、打者の外側に投げるときに比べてリリースがかかりすぎたり、逆に抜け気味になったりしやすい。そういうボールは、得てして思いがけない軌道を生む。だから失投の甘い球にもなりやすいし、逆に今回のように変なかかり具合で大きくシュートしたりもする。要は投げ手の想像を超えたボールになる危険をはらんでいるのである。

【次ページ】 内角に投げるときこそ、制球の技術を。

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