濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
終わってもファンが帰らない熱と余韻。
K-1に感じる、魔裟斗の時と同じ匂い。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2015/04/30 10:40
武尊の表彰式のプレゼンターは現在ロシア格闘技連盟の代表を務めるエメリヤーエンコ・ヒョードル。今後、K-1に選手を派遣する予定もあるとのこと。
K-1のベルトが持っている意味と価値とは?
「これまでずっと、ほしいものは手に入れてきたし、やりたいことは実現させてきたんです」と言う武尊。小学2年生で空手を始めたきっかけも「テレビでK-1を見たから」だった。だから「チャンピオンベルトを取ると決めていた」し、出場が決まった瞬間から自分を追い込んで「精神的におかしくなるんじゃないかと思った」とも言う。
それだけの意味と価値が、K-1のベルトにはあるということだ。数年前、鳥取から上京してきた武尊の夢は、格闘技で「スターになること」。実際、その闘いぶりには、試合中の不敵な笑みや試合後に見せるトップコーナーからのバク宙も含め、独特の華がある。
この日は、ワンマッチに出場した木村“フィリップ”ミノルも大きなインパクトを残した。前大会でK-1 -65kg王者のゲーオ・フェアテックスとのノンタイトル戦を制した木村は、今回HIROYAを1Rでノックアウト。ゲーオを下して「これからは俺の時代です!」と叫んだ木村。今回も「今のK-1はスターがたくさんいるけど、俺が一番盛り上げます」と宣言した。
魔裟斗やアンディ・フグの時代を思わせる熱がある。
武尊と木村には共通点がある。単に勝つ、ベルトを巻くという以上のギラギラした“欲”を持っており、それを隠そうとしないこと。ビッグマウスとも取れる発言をしても、試合で納得させられること。そして業界を牽引しようという気概。
彼らから、十数年前の魔裟斗と同じ匂いがすると言ったら大げさに聞こえるかもしれない。だが少なくとも、それに近いスター性を感じるのは確かだ。
中継でゲスト解説を務めたK-1公式サポーターの関根勤は、大会後のバックステージで目を輝かせた。
「(当時、新興イベントだった)'96年のK-1でアンディ・フグが優勝するのを見て、僕は“K-1は大丈夫だ”と思ったんです。今日はその時と同じ思いですね。みなさん、K-1が帰ってまいりました」
新しい時代の新しいK-1。そこには、魔裟斗やアンディ・フグを引き合いに出したくなるような可能性に満ちた選手たちがいる。