ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「英樹のゴルフはマスターズ向き」
丸山茂樹が指摘するパターと傾斜。
text by

桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2015/04/08 10:40

休養十分でマスターズにやってくる松山英樹。今季は好調を維持し世界ランクも17位。世界的にも、十分にグリーンジャケットに手が届く選手として認識されているのだ。
「英樹って、とにかく練習を積み重ねていくタイプ」
日本で米ツアーを誰よりもよく知る先輩として、丸山は松山に特別に目をかけている。米国滞在中はロサンゼルスの自宅に招き、アドバイスも送ってきた。ゆっくり大きな弧を描く、松山の特徴的なパッティングストロークにも、長い目で見て一歩突っ込んだ指摘を口にする。
「(カップまでの)距離よりも、ストロークが(他選手に比べて)大き目のタイプ。ああいった、ゆっくりとしたストロークでタイミングを取るのは、年を重ねるごとに難しくなる。リズム感を変えた方が良い時期も来るかもしれない。なんとかパットの調子を整えて臨んでもらいたい。悪くても常時20位以内に入れるポテンシャルだからね。『調子悪い、調子悪い』って言っていても、最後に上がってくる。それだけショットはいいんだよね」
ただし、丸山がパッティングという技術的な観点以上に重要さを強調したのが、大一番との、マスターズとの向き合い方である。
「英樹って、とにかく練習を積み重ねてやっていくタイプなんだろうなあと最近思う。あの練習量を見ているとね……。だから体に痛いところ、不安なところがあって、練習量が伴わないと成績が上がらなかったりする」
松山「やっぱり甘い世界じゃないなと思った」
昨年、マスターズを前に松山は左手親指付近の痛みに悩まされ、事前の打ち込みがままならなかった。丸山が絶賛する高弾道の打球も、本人は「もっと高く」と、アイアンのシャフト長を伸ばすなど調整を続けていたが、理想に近づくための肉体の準備ができていなかった。
松山は、あの屈辱の2日間をこう振り返る。
「ケガがあったけれど『ゴルフもそのうち調子良くなるやろ』……と考えていたのが、そう考えられなくなったのはオーガスタの前だった。手とか肩、背中も痛くて、求めているものとは程遠い内容で(オーガスタに)行った。やっぱり甘くないな、甘い世界じゃないなと思った」
胸の片隅にしまい込んだはずの些細な不安すら、見透かされる。それがマスターズだと改めて知った。
フロリダでのアーノルド・パーマー招待を最後に、2週間のオフをとった松山。開幕直前、当地で練習を続ける松山は時折、“古傷”の箇所を気にする様子はあれど、2月、3月に巻かれていたテーピングはない。日暮れまで打ち込み、相変わらずミスショットの行方に呆れ、うんざりしながら顔をしかめている。
「今年は余裕があるはず」と丸山は言った。
オーガスタの魔女への後ろめたさはない。少なくとも1年前よりは。いまはそれが、何よりも頼もしい。
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