松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
マスターズ初日は1アンダー18位発進。
松山英樹が語った唯一の後悔とは?
posted2015/04/10 11:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
4月9日。時計の針が午前10時を回ったころ、オーガスタナショナルは、すでに猛暑に見舞われていた。1番ティから選手たちが緊張の面持ちでスタートしていく。ドライバーが白球を弾く打球音が聞こえるたびに、パトロンたちがどよめき、そして拍手が鳴り響く。
そのとき松山英樹は、1番ティのすぐ後方にある練習グリーンで黙々とショートパットをカップに沈め続けていた。自分が1番ティへ移るタイミングが気になるのだろう。ときどき顔を上げてはティの方に目をやり、再び下を向いてパターを動かす。
そろそろだな――そう見定めたのだろう。ゴルフバッグの横で待つ進藤大典キャディの方へ近寄った松山は、ようやく汗をぬぐい、飯田光輝トレーナーが常に用意している専用ドリンクをゴクゴク飲んだ。キャップの下から見えた彼の目は鋭かった。
開幕前日、松山はショットやパットの仕上がり具合もメンタル面の保ち方も「いつも通り」「いつもと一緒」と答えた。
2週間前に米ツアー会場で尋ねたときも、松山は同じようなことを言っていた。「マスターズも普段の米ツアーの試合の1つという感じでできたらいいけど、なかなかそうはさせてくれない」。そんな彼にとって「いつも通り」と感じられる状況を創出することは、マスターズ開幕前の最大の目標だった。
そして、日本メディアからあれこれ問われたときも「いつも通りです」ときっぱり言い切れたことは、理想的な準備ができつつあったことを意味していたのだと思う。
少ない口数の中に2度も登場した「後悔」。
そういう状況だったから、この日の松山のボキャブラリーはきわめて少なかった。だが、少ない語彙の中で「後悔」という言葉を2度も口にしたことが気になった。
「このコースはチャンスホールもあれば、難しいホールもあるけど、1つ1つ無駄のないように、後悔しないようにやっていきたい」
「期待の声は大きいけど、後悔しないようにやっていきたい」
過去に後悔したことがあるからこそ、今も後悔していることがあるからこそ、その言葉が2度も口をついたのだろう。初出場した2011年はローアマに輝いたものの、'12年は最終日に崩れて悔し涙を流し、'13年は出場できず。'14年は予選落ち。抱いている「後悔」は1つや2つではないはずだ。