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初球のストライク率はメジャー仕様。
黒田博樹の初登板は「格」の勝利。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKyodo News

posted2015/03/30 11:50

初球のストライク率はメジャー仕様。黒田博樹の初登板は「格」の勝利。<Number Web> photograph by Kyodo News

マツダスタジアムは超満員の3万人以上、地元での視聴率は30%を記録した。黒田博樹の凱旋ストーリーはまだ始まったばかりだ。

初球のストライク率はメジャー時代と変わらず。

 高めに浮くケースが気になった以外は、ヤンキース時代と変わることなく、黒田は淡々と自分の仕事を全うしたという印象だ。

 メジャーでは制球力のバロメーターとなる初球のストライクとボールの割合は、打者26人に対して、「ストライク14 ボール12」という数字。

 ちなみにヤンキースでのラストゲームとなった2014年9月25日のオリオールズ戦の割合は、「ストライク15 ボール12」だった。根っこの部分で、投球の組み立ては変わっていないのかと思う。

 ただし、試合後のコメントとして、入り方に関しては慎重になっていたことを認めた。

「ヤクルトは積極的な打者が多いですし、オープン戦のように、正直にストライクを投げたら打たれますから。ボール球を見せつつ、いつものように考えながらピッチングを組み立てました」

 この言葉を聞くと、黒田の「第3戦先発」は正解だったと思う。

 オープン戦で対戦した上に、開幕戦での前田健太、第2戦のジョンソンとヤクルト打線の対戦内容を見て、情報を収集することが可能になったからだ。

黒田のクレバーさが投球に表現されるのはこれから。

「男気」という言葉ばかりが先行しているが、投手としての黒田は研究家で、その内容によっては組み立てを変えられる柔軟性に富む。情緒的な報道に流され、黒田の投手としての真価を見逃してはならないと思う。

 日本はメジャーと違って、何度も対戦する機会が巡ってくる。ひとつの試合が次の対戦の「伏線」として大きく影響してくる。

 シーズンが進むにつれ、黒田のクレバーな部分が投球にどう表現されるか楽しみになってきた。

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