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ACLの“ルーズさ”を知り尽くした柏。
「予想通り」発言を裏付ける経験とは。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/03/18 11:45
この試合の2得点すべてに絡む活躍を見せた輪湖直樹。柏ユースから甲府、徳島、水戸を経て昨年から柏のトップチームでプレーしている。
クラブスタッフが考える「ACLでやるべきこと」とは?
柏のあるクラブスタッフによれば、ACLは出場するたびに“やるべきこと”の細部が異なるという。
例えば、レギュレーション。
例えば、ウォームアップ開始の時刻。
他にも、細かい部分でいろいろなことが変化し、対応を迫られる。
柏の場合、そうした大会運営のルーズさを近年何度も経験し、そのたびに攻略法を練り直し、トライし、クラブ全体でノウハウを蓄積してきたことが自信の根本にある。“余裕”と言ったら語弊があるかもしれないが、クラブ全体にそうした空気を感じ取れるのもおそらくそのためだ。選手たちはどんな相手にも動じないし、何が起きても“やるべきこと”を貫こうとする。
2011年に経験したFIFAクラブW杯の興奮と意義は今もなお彼らの記憶に刻まれており、「もう一度あの大会に出たい」という選手のモチベーションは極めて高い。そうした意識の高さが、昨シーズン最終節でのACL出場権獲得につながったことは間違いない。
「慣れるということはありません。でも、この大会をどう戦うべきか、どう準備すべきかというベースはクラブ全体にある。選手だけでなく、スタッフを含めて、問われるのは応用力ですね」
前述のスタッフは、そう言って笑った。
吉田監督「これがACL」「これがサッカー」。
なぜ、柏だけがACLで結果を残すことができて、他の3チームにはそれができないのか。その答えは、結論から言えば「ない」。
というより、答えを出すべきものでもない。
柏の勝利は、吉田監督が言うとおり「予想どおり」「思っていたとおり」「狙っていたとおり」にことが運んだからこそ得られたもので、サッカーにはそうならない局面もある。グループリーグの組み合わせ、相手との相性、その時々のチーム状況、そして運。今の柏にあるのは、ACLという特殊な舞台で、不確かな状況にも惑うことなく「やるべきこと」を遂行するための経験と自信だ。
とはいえ、現状の満足感は第3節を終えた時点のものに過ぎない。これから3連敗を喫する可能性もあるし、すべてが「予想どおり」「思っていたとおり」「狙っていたとおり」に進むとは限らない。逆に言えば、浦和も鹿島もG大阪も連敗したからと言ってそれで終わりではない。可能性がある限り大会は続くのだから、「柏だけが結果を残している」「日本勢がACLで勝てない」と結論づけるのはまだ早い。
吉田監督の言葉を借りれば、「これがACL」であり「これがサッカー」。そのことを熟知する柏とて、選手たちは「リスクを冒しながら、薄氷の上を歩きながらトライしている」のである。