相手の急所をイヤらしく突いた理想的ゴール。

　無理もない。主導権を握った柏が最終ラインでボールを回し始めると、ワンは最前線からのプレスに追われた。しかし同列に並んでしまったモンティージョにはその意識が希薄で、追えども追えどもあっさりとかわされ、スペースで難なくパスを受ける茨田に何度も攻撃を組み立てられる。

　立ち上がりの10分足らずで攻勢に出たはずの山東は、敵将が言う「攻めれば攻めるほど空く危険なスペース」を見事に使われ、気づけば防戦一方の展開を強いられていた。

　15分には工藤壮人が、20分には鈴木が決定機を迎え、すべてが決まっていれば5点は入ったのではないだろうかと思えるほど柏の攻勢は続いた。ようやく先制点が生まれたのは、「こういうチャンスを外していると、そのうち……」とむしろ不安さえ覚え始めた23分である。

　茨田をオトリにして大谷に縦パスを入れた輪湖も見事。タックルをかわしてターンしながら素早く前を向いた大谷も見事。得意の逃げる動きでマークを外し、ペナルティーエリア内で勝負の姿勢を見せた工藤も見事。シュートのこぼれ球に反応して押し込んだ武富も見事だった。

　相手の急所をイヤらしく突き続ける、理想的なゴールだったと言っていい。

「狙い通り」とはいえ、勝利はまた別問題。

　この試合に関して言えば、柏にとっての正攻法はこうだ。

　フリーの茨田がパスを受けて前を向くと、それを合図に両サイドFWの工藤と大津が中央に走る。茨田はレアンドロを含めた3人のFWのうち最も態勢のいい選手にボールを預け、その瞬間、MFの大谷と武富がサポートに走る。両サイドFWが空けたスペースにサイドバックが飛び出せば、縦に揺さぶられた相手は付いていけない。茨田からレアンドロ、レアンドロから大谷、大谷から輪湖というパスがダイレクトでつながれると、必ずと言っていいほどビッグチャンスが生まれた。あるいは、FWのポストワークを省いて大谷や武富、輪湖やキムを使ってもチャンスは面白いように生まれた。

　ここまでは「狙いどおり」。とはいえ問題は、この1点をいかに勝利に結びつけるかである。

【次ページ】　後半、山東が正攻法で反撃してきたのも「予想通り」。