松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
怪物コースで今年はマキロイが餌食。
松山英樹が1年で我慢強くなった理由。
posted2015/03/09 16:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
キャデラック選手権の舞台、フロリダ州ドラルのトランプ・ナショナル・ブルーモンスターでは、その名の通り、得体の知れないモンスターが世界の一流選手たちに噛み付いていた。
いやいや、大口を開けて、しっかり噛み付いてくれれば、「ああ、噛まれちゃった」とはっきりわかる。だが、噛んでいるのか舐めているのか、わからないような悪戯を知らぬ間に行ない、しかし確実なダメージを与えてくるのだから何とも性質が悪い。
「ショットが悪いとか、何かが極端に悪ければ納得がいくけど、ある程度フェアウェイに行っていて、グリーンにも乗っていて、それでなかなかスコアが伸びないのはストレスが溜まる」
松山英樹も、ドラルのモンスターに手を焼いていた。初日に4オーバー76を叩き、2日目と3日目はスコアを伸ばせそうで伸ばせずじまいのイーブンパーだったが、「初日のほうが、もやもや感がない分まだすっきりしている。この2日間のほうがストレスが溜まる」と、彼はイライラを募らせていた。
世界ナンバー1のローリー・マキロイは2日目の8番でついに苛立ちを爆発させ、手にしていた3番アイアンを思い切り池に投げ捨ててしまった。間違いなく米ツアーから罰金処分を受けたはず。それほど、このコースはいやらしい難しさと精神的な苦しみを選手たちに強いていた。
昨年、初出場だった松山が爆発させた苛立ち。
メディアセンターの裏口トークでは、欧米記者たちが、こんな話に花を咲かせていた。
「今年はローリーがクラブを投げたけど、去年はマツヤマがイアン・ポールターにツイッターで批判される事件があったなあ」
そう、去年のこの大会では確かにそんな出来事があった。初出場だった松山は初めて体験するドラル特有の風や芝、バンカー、とりわけグリーンに苛立ち、2日目の13番でボギーを喫した直後、手にしていたパターで思わずグリーンを叩いてしまった。そして、グリーン面にできてしまった窪みを直さずに立ち去ったことをポールターからツイッターで批判され、ちょっとした騒動になった。
翌朝、松山がすぐにポールターに謝罪して、その事件はダンディール(終わったこと)になったのだが、ゴシップ紙が好みそうな出来事は人々の記憶にしつこく残っているようだ。
しかし、松山自身に「ああいう出来事は今も心のどこかに残っているの?」と尋ねてみると、「いや、全然残ってないっすよ。忘れてました」と、あっけらかん。