松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

怪物コースで今年はマキロイが餌食。
松山英樹が1年で我慢強くなった理由。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2015/03/09 16:30

怪物コースで今年はマキロイが餌食。松山英樹が1年で我慢強くなった理由。<Number Web> photograph by AFLO

世界のトッププレーヤーたちのメンタルを破壊する難コース、トランプ・ナショナル・ブルーモンスター。松山英樹が苛立ちを現さずにラウンドしたことは、賞賛に値する。

悪戯されても激しく応戦せず、静かに踏ん張る。

 そんなふうに、米ツアー選手としても人間としてもメンタル面で成長した松山は、層が厚く競争が激しく、とんでもなく大変な激動の場所にいるときほど、自分自身を見失わないよう静かに踏ん張ることを覚えた。

 だからなのだろう。ブルーモンスターとグリーン上で戦う際も、松山は自分自身が揺らがないことに全力を尽くした。複雑怪奇なラインを読み、読んだ通りにパットしているのに、なかなか入ってくれなかったときでさえ、彼は自分を信じ続けた。

「外れても読み方は変えないです。自分が読んだラインを信じないで、右に外れたら左、左に外れたら右なんてやっていたら、どれが正しいのかわからなくなる。自分の読み方を信じないで変えてしまって、それでわからなくなったら、元も子もない。(一気に変えるのではなく)少しずつ修正できたら、いいなと思う」

 モンスターに悪戯されても、揺るがない、自分を見失わない。モンスターに戦いを挑まれても激しく応戦せず、穏やかに徐々に戦っていく。そして、いつか気が付けば、最後には競り勝っている。そんな静かな戦い方を、今年の松山は身に付けている。

やっぱり、モンスターはいたらしい。

 とはいえやっぱり人間だから、捨て台詞の1つや2つは言いたくもなるのだろう。

「今年は我慢できていると自分で思う?」と真っ向から尋ねたら、「我慢できてなかったら、ローリーみたいにパター投げてます!」と真っ向から応戦。が、そんなときも、マキロイが投げた3番アイアンを自分の場合に当てはめて、ちゃんと「パター」と言い替えていたところは、彼の茶目っ気だった。

 最終日は強風が吹き、冷たい雨も降り、4日間の中で最も悪いコンディションになった。しかし、その中で松山は4日間で初めてアンダーパーで回り、2つスコアを伸ばした。去年は最後に順位を落としたが、今年は最後に40位から23位へ順位を上げた。去年とは違う今年の松山は、去年とは違う今年の戦い方を披露し、そこに満足を感じ取っていた。

「去年より、ずっと我慢強くなったよね」

 戦いを終え、柔和な素顔に戻った松山に、もう一度そう言ってみた。

「そうっすかね? どうっすかね?」

 真っ向から褒められると、ちょっとばかり照れ臭そうな怪物に「ねえねえ、このブルーモンスターにモンスターは本当に居たのかしら?」と尋ねた。

「どうっすかね。池のせいでしょ? まあ、でも、あのローリーがあんなことするんだから……」

 やっぱり、モンスターは居たらしい。

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