松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

怪物コースで今年はマキロイが餌食。
松山英樹が1年で我慢強くなった理由。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2015/03/09 16:30

怪物コースで今年はマキロイが餌食。松山英樹が1年で我慢強くなった理由。<Number Web> photograph by AFLO

世界のトッププレーヤーたちのメンタルを破壊する難コース、トランプ・ナショナル・ブルーモンスター。松山英樹が苛立ちを現さずにラウンドしたことは、賞賛に値する。

怪物・松山と怪物コースのバトルは、グリーン上へ。

 だが、そういう出来事は忘れられても、最終日に3つスコアを落として21位から34位へ順位も落として終わった去年の苦い結果は、彼の記憶からまだ消えてはいなかった。

「去年も、あんまり良くなかった……」と苦々しそうに思い出し、だからこそ今年は「明日、アンダーで回ってこれれば、いいな」。

 3日目を終えたとき、松山は最終日の巻き返しを心に誓っていた。

 ドラルがブルーモンスターなら、松山も日本で怪物と呼ばれている。怪物・松山が怪物コースに挑むのだから、さぞかし激しいバトルになりそうだと思えるかもしれない。しかし、松山のゴルフに対する向き合い方は、アグレッシブというより、むしろ穏やかだった。

 今年は4日間を通してティショットは安定しており、アイアンショットも決して悪くなかった。とはいえ、「芝、風、いろんな要素の何かが思ったより合っていなくて、それで距離感が合わない」というミスが出ることは何度かあったが、「しっかりリカバリーできた」。それなのに「スコアが伸びそうで伸びない」ことに苦しんでいたのだから、究極の課題はグリーン上ということになる。

 怪物・松山と怪物コースとのバトルは、かくして最後の最後はグリーン上に集約されていった。

1年間の米ツアーの経験は、松山の忍耐力を向上させた。

 そのバトル、激しく真っ向から立ち向かっていったら、それこそ性質の悪いモンスターの思うつぼになる。去年の松山は、そのワナにかかってしまったからこそ、思わずパターを振り降ろすことにもなった。だが、今年の松山は、もはや去年の松山とは違う。

 この1年間米ツアーで戦ってきた経験は、彼の技術力を向上させたと同時に、彼の精神力、忍耐力も向上させた。最後の最後まで何が起こるかわからないのが米ツアーであり、世界の舞台であり、それがゴルフの深奥であることを、彼は自身の勝利や日々の戦いの中で噛み締めてきた。

 歯を食いしばって連戦に挑むだけが奮闘ではなく、「頑張る」という言葉の意味の中には「思い切って休む」大切さも含まれていることを、初めて過ごした米ツアーのオフの中で痛感し、余裕を持ったスケジュールを組んでいることで、心にも余裕が見て取れる。

【次ページ】 悪戯されても激しく応戦せず、静かに踏ん張る。

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