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巨人・大田泰示は真の4番になれるか。
落合博満、松井秀喜の「インハイ論」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/02/24 12:20
春季キャンプでの練習試合では、4番・中堅のスタメンとしても数字を残している大田。毎年のように期待される「覚醒」が、今年は実現するか?
なぜ原監督は「今年こそ大田」なのか?
プロ6年目の昨シーズン終盤に一軍で結果を残し、このキャンプでは「4番候補」として監督、そしてファンの熱い視線を浴びている。
原監督が「今年こそは」と期待を寄せる根拠は、技術的なステップアップにあった。
「バットの出方が一定になってきた」
バットマンとしての原監督の視点だ。
「トップの位置から速いボールでも、遅いボールでも、バットの軌道が同じところから打てるようになった。今までは煽ったり、かぶせたりしていたのが、非常にスムーズに安定してきたと思いますね」
昨シーズン終盤の爆発の頃から、この技術的傾向は見てとれた。そういう意味では爆発すべくして、爆発したということだったのだ。その上でオフの自主トレから下半身と体幹の強化を図って、スイング軸の安定を目指してきた。
その成果を見せたのがこのキャンプでの打撃で、紅白戦や練習試合で好結果を残し、本格的な覚醒への期待を高めたのである。
ただ、である。
プロの世界はそうは甘くないというのは、ここまで2試合を消化したオープン戦での内容だった。
大田は「インハイを何とかできるように」なったか?
2月21日の広島戦と22日の楽天戦に「4番・センター」で先発した大田は7打数1安打2三振という結果に終わった。
広島戦の第1打席で真ん中からやや内角寄りの真っ直ぐに詰まって中前に落とした安打が1本。決して内容的には、満足のいくものではなかった。
特に気になるのは紅白戦や練習試合でも、真っ直ぐをきっちり引っ張ったライナー性の当たりが少ないことなのだ。
これまで弱点とされてきた外角に流れるスライダー系のボールを、右中間方向に強く打ち返せるようになった。ポイントを引きつけて、センター返しを意識することで突っ込まずにしっかりと叩けるようになったということである。ただ、その一方で甘めのストレートをしっかりと引っ張りきれていないという印象なのである。
要はかつて落合GMが松井さんに話して聞かせた「インハイを何とかできるように」はなっていないようなのである。