岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
岩渕健輔が語る、代表GM5つの仕事。
「変えるのが難しいこと」を変える。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byWataru Sato
posted2015/02/11 10:30
36歳という若さで日本代表のGMに就任した岩渕健輔氏。海外でのプレー経験もあり、日本の風土に染まりきっていなかった彼だからこそ、多くの改革は成功したのかもしれない。
4年間で1度だったトップ10との試合も、2013年は4回。
強化プランの立案でもう一つのポイントになったのは、テストマッチと呼ばれる国際試合のマッチメークです。たとえば2008年から私がGMになるまでの4年間、日本代表が「ティア1」(世界のトップ10に分類されるチーム)と試合をしたケースは、W杯を除けば1回しかありませんでした。
しかし2013年には、1年間で4回も試合を組むことができました。
マッチメークを実現させた舞台裏の話については、別の機会に詳述したいと思いますが、強豪チームとの試合を増やすことは、W杯に向けた日本代表の強化を図る上で重要な要素でした。
同時に長期的な強化のために必要なのが、トップリーグや大学ラグビーなどをレベルアップして世界との戦いに直結したものにすること、そして協会のステイタスを高めていくことです。
私の仕事は代表チームの強化ですので、国内リーグの整備などは本来の職務からは外れています。しかし重要な課題であるのは明らかですし、協会そのものの影響力を強めていくことも、日本ラグビーの未来にとって大きな意味を持ちます。もちろんスタッフは誰もが必死に努力をしていますが、協会側がもっとイニシアチブと資金力を確保し、ラグビー界全体をひっぱっていけるような存在になっていかなければならないからです。
2年で結果が出なければ、監督とともに辞職する気だった。
幸い予算の編成に関しては、今年と来年にはW杯とリオデジャネイロ五輪、さらに2019年と20年にW杯の日本大会と東京五輪が開催されるということで、関係各方面からかなり協力をしていただいています。
その点で自分は恵まれているわけですが、だからこそGMとして結果を出していかなければならないという責任をひしひしと感じています。
チーム同様、GMも最終的には結果を出せたかどうか――。様々な慣習や仕組みを目に見える形で変え、日本代表の強化に貢献できたか否かで判断されます。これは今だからこそ打ち明けられますが、私はGMに就任してからの2年間で、ある程度の結果が出なければ、ヘッドコーチのエディー・ジョーンズと共に職を辞する覚悟でいました。日本代表に携わるというのは、それだけの覚悟と決意が求められるのです。
しかし幸い、GM就任2年目の2013年に日本代表は強豪のウェールズに勝つことができた。むろん実際には合格点を取ったというよりも、ぎりぎりで及第点をクリアしたレベルだと思いますが、まがりなりにも結果が出始めたということで、GMを続けていこうと決意を新たにしたのが実情でした。