変えるのが難しいことをこそ、変える必要がある。

　ビジョンの構築力、人を見る目、交渉能力、協力してくれるスタッフや選手、チームやスポンサーの存在。GMとして5つの仕事をこなしていくためには、様々な条件を満たすことが求められます。たとえばリーダーシップを発揮してぐいぐい引っ張っていくべきタイミングと、あえて調整役に徹する時の見分け方なども、GMに求められるスキルの一つでしょう。ファンの皆さんの後押しが欠かせないのも、言うまでもありません。

　ただしGM個人に目を向けた場合、最も問われるのは明確なビジョンと、こうと決めたら貫き通そうとする決意の有無、そして究極のポジティブ・シンキングができるかどうかではないかと思います。

　物事を変えていくというのは、決して簡単ではありません。私が携わってきたのも、改革するのが難しいと思われてきたような案件ばかりです。

　しかし「変えるのは難しい」とされてきた事柄を変えていかなければ、何も状況は変わらないし、絶対に結果も出ない。そこで重要になるのは、最初から無理だと思って諦めてしまわない前向きな姿勢と柔軟な発想、そしてどんなに苦境に陥っても諦めない、粘り強さとガッツなのです。

　GMに就任してからは、きちんと休みを取るのも難しくなりましたし、月の半分は日本を離れて海外を飛び回るような生活が続いています。タフな日常ではありますが、少なくとも今年9月のラグビーW杯イングランド大会、ならびに五輪予選が終わるまでは、このまま日本ラグビーのためにヘッドコーチやスタッフ、選手たちと共に突っ走っていければと思います。

（取材・構成：田邊雅之）