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「自分の新しい部分が見えて楽しい」
長谷部誠が語るアンカーという新天地。 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/01/22 11:35

「自分の新しい部分が見えて楽しい」長谷部誠が語るアンカーという新天地。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

森重真人、細貝萌らとの競争を勝ち抜き、日本代表のアンカーのファーストチョイスとなった長谷部誠。攻守に奔走する長谷部の存在が、チームに安定感をもたらしている。

狙い通りの戦略で、長谷部はしてやったりの表情。

 長谷部が新たなポジションで見せているプレーは、周囲にも好影響を与えている。右サイドバックとして台頭してきている酒井高徳は、ホンジュラス戦での長谷部のプレーに大いに刺激を受けたと話していた。前半41分、長谷部のボール奪取が起点となった本田圭佑のゴールシーンだ。

「圭佑君のゴールは、ハセさんが体を張って中盤でボールを奪ったところからだった。ああいうプレーがチームに勢いや闘争心を与える。球際のところで勝つとどういった現象が起きるかを感じるプレーだった。自分も戦う気持ちを出して、周りに力を与えられたらいいと思った」

 味方とのコンビネーションプレーからゴールの起点になった場面もある。ヨルダン戦の前半24分に、本田の先制点の起点になったプレーだ。ビルドアップからサイドに揺さぶりをかけ、ゴール前に入っていく乾貴士に縦パス。これが本田のゴールにつながった。

「サイドで幅をつくってから中を崩すのは効果的。特にヨルダンは中盤がダイヤモンドで真ん中に選手が集まっていたので、サイドにスペースが空くというのは分かっていた。サイドで起点をつくって中で仕留めるということを考えていた」

 狙い通りの攻めを成功させ、長谷部はしてやったりの表情だった。

理想像の「守備力のあるシャビ・アロンソ」へ。

 センターバックとの連係は、今の時点でかなり精度が上がってきている。吉田麻也は「相手が1トップか2トップかにもよるし、攻め込まれるかどうかにもよるけど、『臨機応変にハセさんが落ちたり、人数が足りていたら前にいったりしていい』『ハセさんと僕が互いに感じ合いながら、僕ら自身のジャッジでポジション取りをしていい』と、監督からは任されている」と守備連係の方向性に手応えを感じているようだ。

 吉田は、高い位置でボールを奪うというコンセプトだったザックジャパン時代の守備と比べ、「今は前すぎず後ろすぎずのバランスがいいと思う」と言う。そのバランスをつかさどるのが、長谷部だ。

「元々僕はトップ下の選手。攻撃に対する思いがあるから葛藤はある。でも、新しいポジションでやっている喜びはもちろんある。自分のプレースタイルとか、人間性とか性格を考えたときに、自分の新しい部分が見えるということは楽しい」

 この先は対戦相手のレベルも上がり、今までうまくいったことが簡単にはできない相手との戦いが続いていく。何より、アジア杯以降は世界を見つめなければいけない。

 理想像である「守備力のあるシャビ・アロンソ」を目指す旅は始まったばかり。骨のある相手との戦いを重ねながら、31歳は進化を続けていく。

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