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日本人が誰も貫けなかった生き方を。
岡崎慎司、フォワードの理想を語る。
posted2015/01/22 16:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Takuya Sugiyama
「岡崎慎司 プレミアリーグ・レスターへ移籍か?」
大会開幕前に流れた移籍報道。清水エスパルスからシュツットガルトへの移籍が騒がれていた4年前のアジアカップを思い出させた。移籍成立までの難航が予想されるのも同様だった。
「ふたつ(レスターとマインツ)のチームから期待されているというのは、選手としてやってきた甲斐があるなと思いますね。まあでも決まるときは決まるし、決まらないときは決まらない。それ(交渉)は僕の役目ではないから。僕は、アジアカップでの優勝に集中するだけです」
“プレミアリーグ挑戦”という夢への期待を口にしつつも、事の成り行きに岡崎が右往左往することはない。しっかりとアジアカップに集中し、そして今もまた新しい壁を打開しようと戦っている。
「前回大会のときはJリーグの経験しかなかったけど、ドイツで苦しんだ時期もあるし、結果を残せた時期もある。そういう経験ができた部分で4年前とは違う」
岡崎の現状の前に、彼のドイツでの4年間をざっと振り返ろう。
便利な選手になるか、フォワードとして勝負するか。
2011年冬に移籍したシュツットガルトでは当初、岡崎の攻守にわたる献身的なプレーが評価された。チームのために働くことに迷いはなく、その姿からは「特別に高い能力のない自分にとって、それこそが持ち味」と考えているようにも見えた。
しかし気がつくと、中盤のポジションで守備に奔走させられていた。チームプレーよりも、ただゴールだけを欲し、それをモノにして賞賛を集めるストライカー。そんなチームメイトFWの姿に嫉妬を抱くこともあっただろう。
「このまま何でもできる便利な選手になることが、欧州でプレーするためにはプラスかもしれない」
そんな風に考えたこともあったという。しかし、苦悩の末にたどり着いた結論は、違うものだった。
「自分は器用にパスを捌いてゲームメイクをすることができるタイプじゃない。自分が勝負できる唯一のポジションは、フォワードだ」