MLB東奔西走BACK NUMBER
キューバ市場がついに一挙開放か?
国交正常化が野球界に与える「影響」。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2015/01/05 10:30
2014年8月に7年総額7250万ドルでレッドソックスと契約した、ルスネイ・カスティーヨ選手。キューバから亡命しての入団で、2014年シーズンは10試合に出場、36打数12安打、打率.333、盗塁3とその才能の片鱗を見せた。
アカデミー建設による、選手育成・獲得のシステム化。
国交正常化の暁にメジャー各チームが真っ先に着手するのがアカデミーの建設だ。
言うまでもなく、少しでも多くの若くて有望な人材を確保するためだ。そうなれば現在のドミニカやベネズエラのように安価な契約で選手を獲得し、その中からメジャーで通用する選手を育成していく、というシステムを確立できる。
元々キューバの野球シーズンもメジャーのオフシーズンに実施されており、選手がメジャーに大量流出したとしても、ドミニカやベネズエラのようにウィンターリーグとして存続できるのでまったく問題ない。
日本独自ルートの崩壊と再構築へ向けて。
では、日本の野球界に目を向けてみるとどうだろうか。
選手獲得のシステムが出来上がってしまえば、キューバ市場におけるNPBの独自ルートはまったく機能しなくなり、メジャーで“通用しなかった選手”を狙って獲得していくしか、ほぼ方法がなくなるだろう。
これまで米国が国交断絶を続ける中、日本は長年に渡りキューバと野球交流を行なってきた。
それを物語るように、プロ解禁される前の2002年には、キューバ野球史上屈指の強打者と言われたオマール・リナレス選手が中日と契約している。当時、NPBの人間に少しでも野心家がいたのなら、すでに日本で多くのキューバ選手たちがプレーしていたのかもしれない。
だがあくまで長年、犬猿の仲だった米国とキューバ間での交渉だ。順調に進むのか疑問であるし、いつ国交正常化できるのかも誰にも分からない。その分、NPBがキューバに働きかける猶予もあるということだ。
NPBにとってもキューバ市場が魅力的であることは間違いない。
広島がNPBで唯一、ドミニカでアカデミーを運営しているように、キューバでアカデミーを開設するのも策の一つだろう。
いずれにせよキューバ市場を巡ってメジャーと対抗できる策を講じることが、まさにNPBに課せられた喫緊の課題と言えるだろう。