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今、サッカー界で話題の“中西塾”。
指先から眼球に及ぶ、異例の指導法。
posted2014/12/24 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Takuya Sugiyama
「シュートを打つとき、銃の引き金を引く直前の手の形にすると、 より正確に蹴ることができます」
中西哲生(スポーツジャーナリスト、元プロサッカー選手)
今、秘かにサッカー選手の間で話題になっている指導法がある。
その発案者は中西哲生。名古屋グランパスエイト(現・名古屋グランパス)と川崎フロンターレでプレーした元Jリーガーだ。
中西と言えば、TVやラジオで活躍するコメンテーターとして知られているが、その一方でサッカーの技術を独自に研究する指導者としての顔がある。そして骨格・筋肉・神経・内臓・呼吸・血流・脳という視点から、オリジナルの指導法に行き着いた。
日本代表を含む10人ほどの選手が集う“中西塾”。
中西塾、とでも言おうか。
現在、男女含めて、約10人の選手を教えている。その中には日本代表もいる。
選手がオフで帰国したときに直接指導することもあれば、動画を送ってもらって国際電話でアドバイスすることもある。もちろん試合中継を見て改善点を伝える。この活動は中西にとってはあくまで“サッカー哲学の追求”で、報酬は一切もらわない。完全無料プライベートレッスンである。
たとえば、中西がある選手に伝えたのは、「軸足でドリブルする」という技術だ。
選手が自分の右横にボールを置いて、右に進む場合を例にしよう。普通の感覚なら、右足でボールを蹴りながら進むのではないだろうか。だがこのやり方だと、どうしても足からボールが外側に離れ、敵に奪われる確率が高くなってしまう。
そこで中西は「右足でボールを押すようにしながら、軸足である左足で地面を蹴って進もう」と指導。するとその選手の足からボールが離れなくなった。
右足の内側にボールを置いて、左に進むときも、「軸足でドリブルする」という感覚は同じだ。右足でボールを引っ掛けるようにして進めばいい。
これは中西理論の入り口にしかすぎない。真骨頂はここからだ。