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W杯落選、手術……、激動の2014年。
今、中村憲剛が語る「サッカー愛」。
posted2014/12/30 11:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
ジーンズの裾をたくしあげ、靴下をつま先まで下げると、あらわになった左足首には通常の倍ぐらいの大きさの絆創膏が貼られていた。
「ここ、穴がふたつ空いているんですよ」
絆創膏の上から患部をそっと撫でながら、中村憲剛はそう言った。
「ひとつは内視鏡を入れた穴、もうひとつはシェーバーを突っ込んだ穴。神経に当たっていた骨を削ったんです。けっこう削ったみたいですけど、骨のカスを見せてもらえなかったので、どれぐらい削ったのか、自分では分からないんです」
シーズン終了を待たずして、彼が12月4日に受けたのは、足首の前面にできた骨棘を取り除く手術である。
この障害は「フットボーラーズアンクル」とも呼ばれ、足首を酷使するサッカー選手にとって職業病と言えるものだ。
脛骨下端と距骨が何度もぶつかって、骨軟骨が摩耗してしまう。それを修復しようと治癒力が働くために、摩耗と増殖が混在する状態となり、骨に変化が生じる。これがトゲのようになって神経を刺激し、痛みを引き起こすのだ。
「こんな足、見たことない。よくやれていたね」
発端は4月22日のACL、蔚山現代戦だった。
試合終盤、相手のクロスをブロックしようと投げ出した足の裏にボールが直撃し、足首がスネのほうへとグッと押された。その衝撃が原因で、元々あった骨棘の予備軍が成長してしまったのだ。
「(W杯の)中断期間で炎症がひいたんですけど、8月末ぐらいから痛みがぶり返して。10月に入ってCTスキャンを撮ったら、それを見たチームのトレーナーに『こんな足、見たことない。よくやれていたね。早くきれいにしたほうがいいよ』って言われました」
この時点で川崎フロンターレは、わずかながら優勝の可能性を残していた。それなのに、自らシーズンを終わらせるわけにはいかない。
痛み止めを打ちながら騙し騙しプレーを続けていたが、11月2日の清水エスパルス戦で右足首まで痛めてしまう。さらにこれが思いのほか重傷で、シーズン中の復帰が難しくなったため、最終節の2日前、左足の手術に踏み切ったのだった。