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今、サッカー界で話題の“中西塾”。
指先から眼球に及ぶ、異例の指導法。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/12/24 10:30

今、サッカー界で話題の“中西塾”。指先から眼球に及ぶ、異例の指導法。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

スポーツジャーナリストとして活動する一方で、日本サッカー協会の特任理事も務める中西哲生。著書も複数あり、活動の幅の広さは元サッカー選手としても異例の存在だ。

科学的な思考は大阪大学名誉教授の父親ゆずり?

 中西の父親は大阪大学名誉教授(発生生物学)で、アカデミックな環境で育ったのも影響しているのだろう。中西の思考はとにかく科学的だ。

「僕が注目しているのは呼吸です。呼吸が止まると、血液の流れが悪くなって、すべてに悪い影響を及ぼす。たとえばフィギュアスケートで選手がジャンプする直前、息を止めている選手は高い確率で失敗してしまいます」

「これは動きを止めない、ということにも通じます。本田圭佑がさすがだなと思ったのは、ブラジルW杯出場を決めたオーストラリア戦でのPK。蹴るまえにずっと足踏みをして、動きを止めないようにしていました」

「だから選手には、もし緊張しているなと思ったら、両足の太腿を手のひらで交互にタップするように伝えている。そうすると緊張がほぐれます。僕も番組の打ち合わせなどで思考が鈍くなってきたと思ったら、指で机をタップするようにしています。それだけで体がリズムを取り戻すんです」

 眼球の状態も、観察ポイントのひとつである。

「細かい話は省きますが、眼球の状態が、内臓の状態に大きく関係することが医学的にわかっています。眼球の下にある骨のまわりが固くなると、内臓の皮膜も固くなってしまう。眼球を柔らかく保つイメージも大切なんです」

教えを請う選手は増えている。

 中西の指導の効果は選手間で話題になり、教えを請う選手が増え続けている。ただ、中西はまったく苦に感じていない。

「人を幸せにするのが、何より自分の楽しみで。それに自分の名前は哲生。『哲学に生きる』のが運命だと感じています」

 世界のサッカー界において、こういう視点で指導をしている人物は皆無だろう。中西には『日本代表がW杯で優勝する日』(朝日新聞出版)というタイトルの著書がある。この指導法を日本サッカー界全体で突き詰められれば、本当にその日が来るかもしれない。

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#中西哲生

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