フットボール“新語録”BACK NUMBER
元浦和コーチ・モラス雅輝の決断。
オーストリア2部のコーチに就任。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph bySV Horn
posted2014/12/08 10:40
モラス雅輝(左)が卒業した「オーストリア・スポーツマネジメント・アカデミー」で、現在20歳にしてSVホルンでGMを務めるプリシングとも同級生だった。
エリート養成アカデミーで培ったコネクション。
2つ目の理由は、SVホルンの新GMがモラスの“同級生”だったことだ。
以前、この連載で取り上げたように、モラスは2013年1月からオーストリアのブンデスリーガが主催する『ブンデスリーガ・スポーツマネジメント・アカデミー』に通っていた。同国サッカー界に貢献する人材を育てるエリート養成講座で、同級生には元バイエルンのヤンカーらがいた。今年9月、モラスは日本人として初めて同講座を卒業している。
その同級生の中にSVホルンの新GM、マーク・ケヴィン・プリシングもいたのである。プリシングは元々、オーストリアのアメリカンフットボールのクラブのGMだったが、同講座の卒業後にブンデスリーガ協会に転職。すると10月下旬、SVホルンの新GMに指名された。年齢は20歳。異例の大抜擢だった。
実は旧GMも、モラスとプリシングと同時期に『ブンデスリーガ・スポーツマネジメント・アカデミー』に通っていた同級生だ。旧GMはアドバイザーとしてクラブに残ることが決まっている。
つまり新旧GMともにモラスの同級生で、同講座を通じてこの日本人指導者の優秀さを身を以て知っていた。11月上旬に新GMからモラスに直接電話があり、「コーチに興味があるか?」とオファーが届いたのだった。
複数届いたオファーから、SVホルンを選んだ理由。
11月中旬にSVホルンのクラブハウスを訪れて、互いのビジョンを語り合った。新GMはこんな口説き文句を投げかけてきた。
「今季のオーストリア2部は大混戦で、私たちの最重要課題は残留だ。だが同時に、私たちは2017年までにブンデスリーガへ昇格するという3年計画を打ち出している。この2つの目標のために、ぜひトップチームのファーストコーチとして、すべての面において監督を支え、チーム力アップに力を注いでほしい」
実はモラスには、他クラブからもコーチの誘いがきていた。ただし、そちらの仕事はアジア人選手獲得や日本のスポンサー提携を意識したもので、あまり魅力を感じていなかった。だがSVホルンは、完全に自分を指導者として評価してくれている――。自ずと気持ちは後者に傾いた。