スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
FAの動向と投高打低の変質。
~レッドソックスが岩隈を狙う理由~
posted2014/11/29 10:40
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
松坂大輔が日本球界への復帰を表明する少し前、彼の古巣ボストン・レッドソックスはパブロ・サンドバルとハンリー・ラミレスの獲得を発表した。
ふたりは2014年FA市場の目玉選手だ。彼らを筆頭に、主なポジション・プレイヤーは早々と去就が決まった。ヴィクター・マルティネスはタイガースと再契約。ラッセル・マーティンはブルージェイズ。アダム・ラローシュはホワイトソックス。ビリー・バトラーはアスレティックス。
いずれにせよ、貧攻に泣かされたレッドソックスの打線が大幅に強化されたことはまちがいない。30球団中22位のチーム打率や、18位の得点数はかなり改善されるだろう。
三遊間も、といいたいところだが、故障が多くて守備の巧くないラミレスはたぶんショートからレフトにコンバートされる。正遊撃手の座につくのはイグザンダー・ボガーツだろう。
投高打低にも、時代によって変化がある。
となると、どうしても気になるのは投手陣だ。まず先発陣は、ジョン・レスターやジョン・ラッキーがチームを去ったあと、ほとんど潰滅状態になった。クレイ・バックホルツ、ジョー・ケリー、ルビー・デラローサの顔ぶれはいかにも危なっかしい。上原浩治、田澤純一、エドワード・ムヒカのブルペンも、盤石の信頼を置けるとはいいがたい。投高打低の傾向がつづく大リーグにあって、王者からどん底に転落したレッドソックスは、この陣容で逆襲できるのか。
ただ、ここで見逃したくないポイントが浮上する。
投高打低とひと言でいっても、その内容が時代によって変化していることだ。
1968年の「投手の年」が顕著な例だが、かつての投高打低時代は、「働き者の速球派」が主役をつとめていた。いいかえれば、年間30試合を超えるゲームに先発し、合計で200イニングス以上を投げる剛速球型のピッチャー。ボブ・ギブソンも、トム・シーヴァーも、ノーラン・ライアンも、例外なくこのタイプに属していた。
その傾向は、つい最近までつづいた。ロジャー・クレメンス、ランディ・ジョンソン、ジョン・スモルツといった「威圧型」の投手を主流と見なす人は、けっして少なくなかったのだ。