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出場義務試合数は誰のための制度?
松山、石川の“集客力”ゆえの苦悩。
posted2014/11/28 10:40
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Kyodo News
一番ホッとしているのは誰だろうか。
松山英樹がダンロップフェニックスで、日本ツアーの今季初勝利を飾った。松山にとっては、用具契約を結ぶダンロップスポーツ伝統のホストトーナメント。混戦で迎えた最終日は、上がり2ホールで連続バーディを奪ってプレーオフに持ち込み、岩田寛を退けた。
「勝ちたいと思ってこの大会に照準を合わせて、今までないくらい4日間とも集中して勝てた。こういうプレッシャーの中で勝つことができたのは、これから先の大きな大会でも生きてくる」
人知れず背負い込んでいた期待と重圧の大きさが、言葉から伝わってくる。もちろん松山本人が、喜びの中に安堵感を持つひとりであるのは当然。だがこの1勝は、多くの関係者の胸のつかえを取り去る1勝でもあった。
石川、松山の集客力を日本で発揮させるための新ルール。
米国に巣立った石川遼、そして松山という2人を失った日本ツアーは、今季開幕前、彼らに関する新たなルールを突然施行し、物議を醸していた。
日本を含め世界の各ツアーは、年間のシード権を持つ選手にはそれぞれ「出場義務試合数」を課している。複数年プレーできるシード権を持っていても、出場試合数が規定に達しなければ、翌年の出場権は保証しないというものだ。
日本男子ツアーは今年、複数年シードを持つ選手に対して規定数を「日本国内で開催される5競技以上のツアートーナメント」と設定。昨季までは「0」だったのが、一気に5試合への参加を課すようになったのだ。ルール変更の目的は明らかで、石川、松山が持つ圧倒的な集客力を、引き続き日本でも発揮してほしいというもの。年間の参加数が5に満たなければ、翌1年間のシード資格停止処分の対象となった。
この決定は、開幕前の3月。2人の主戦場である米ツアーが中盤戦に差し掛かった時だったこともあり、反響は大きかった。日米往復を繰り返して5試合をこなすのは、体力的にも難しいと、選手の立場からは不満が上がった。それと、「育った場所である日本ツアーに貢献してほしい」というツアー側の思惑が対立した。