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リーグでは降格圏、CLは決勝T進出。
ドルトムントと香川の“奇妙な状況”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/11/05 16:30
CKキッカーを務めた香川の近くに発煙筒が投げ込まれるなど、ガラタサライとの一戦は異様な雰囲気の中で行なわれた。しかしその香川が蹴ったCKをゴールにつなげるなど、ドルトムントは4得点を奪って決勝トーナメント進出を決めた。
ドルトムントの格下への取りこぼしが多い理由とは?
まず、忘れてはならないのが、近年のドルトムントは格下相手の取りこぼしが多いという事実だ。
昨シーズン、一昨シーズンとブンデスリーガで優勝したバイエルンと、どちらの年も2位だったドルトムントの勝ち点差は、昨シーズンが19、一昨シーズンは25もあった。ただ、過去2シーズンもバイエルンとの直接対決の結果は全くの五分である。
ここまで読めばもうおわかりだろう。リーグ戦で結果を残せない第一の理由は、リーグ戦で対戦する引いた相手を崩すのが得意ではないからだ。
'11-'12シーズンを最後にに香川が去り、ロイスが加わったドルトムントは、縦への速さを追求し続けてきた。その結果、相手が前に出てくるCLでは結果を残せるようになった('11-'12シーズンはグループリーグ最下位、'12-'13シーズンは準優勝、'13-'14シーズンはベスト8)。
しかし前述の通り、相手が自陣に引いて守備を固めることにより、縦への速さを生かせなくなるリーグ戦では、思うように結果が残せなくなっている。
“縦への速さ”以外の部分が大事になるのだが……。
興味深いのは、最後にリーグ優勝した'11-'12シーズンの前半戦と後半戦の成績の差だ。
前半戦 勝ち点34
後半戦 勝ち点47
この差がどこで生まれたか。その最大の原因は、2列目の並びが変わったことだ。
前半戦の主な並びは右から、ゲッツェ、香川、グロスクロイツ(またはペリシッチ)
後半戦の主な並びは右から、ブラシュチコフスキ、香川、グロスクロイツだった(ゲッツェは怪我のために後半戦は3試合しか出場していない)。
どう見ても、前半戦のメンバーの方が得点力はある。市場価値を考えてみても、前半戦の並びの方がはるかに値段は高い。
しかし、結果が出たのは後半戦の面々が並んだときだった。
このシーズン、後半戦の組み合わせが攻撃ではコンビネーションを、守備ではハードワークを生んでチームに優勝をもたらした。その意味で、縦への速さ以外の面、連動性と献身性を持つ香川が復帰した恩恵は、リーグ戦でこそ発揮されてほしいものだ。