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リーグでは降格圏、CLは決勝T進出。
ドルトムントと香川の“奇妙な状況”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/11/05 16:30
CKキッカーを務めた香川の近くに発煙筒が投げ込まれるなど、ガラタサライとの一戦は異様な雰囲気の中で行なわれた。しかしその香川が蹴ったCKをゴールにつなげるなど、ドルトムントは4得点を奪って決勝トーナメント進出を決めた。
首脳陣もファンも、リーグよりCLに熱を上げている。
また、やっかいなのは、CLでコンスタントに成績を残せるようになったことで、一気にクラブの収益が増えていることだ。首脳陣の意識がビッグマネーを生むCLに向くことは防ぎようがない。また、ホームのシグナル・イドゥナ・パルクに足を運んでみれば一目瞭然なのだが、ファンのテンションもCLの方が明らかに高い。
CLなど、UEFA主催の大会では立見席が禁止されているため、立見が許可されているリーグ戦と比べて、満員になったとしても観客数は15000人近く減るのだが、それでもスタジアムの威圧感はCLの方が高い。ファンもまた、この世界最高峰の戦いに、より熱を上げているのだ。
戦術面でも、試合を取り巻く環境でも、CLでより良い戦いが出来る条件がそろっている、ということだ。
前線でキープできたレバンドフスキの代役はいない?
リーグ戦で思うように結果を残せない2つ目の理由が、昨シーズン終了後にチームを去ったレバンドフスキの代わりを務めるフォワードたちにある。
スタートから最初の30mまでのスピードが“あの”ウサイン・ボルトよりも速いと言われるオーバメヤン、昨シーズンはヘルタで1トップを務めてブレイクしたアドリアン・ラモス、CL第1節のアーセナル戦や今節のガラタサライ戦でゴールを決めた昨季のセリエA得点王インモービレ……。
彼らはいずれもカウンターでこそ活きるタイプだ。狭いエリアで相手に寄せられても、身体を張ってキープすることが出来たレバンドフスキとはタイプが決定的に異なっている。CLのように相手が前に出てくる状況があれば、現在のフォワード陣も活きてくるのだが、リーグではその能力を十分に活かせていない。
ロイスの負傷が象徴する準備期間の誤算。
そして、3つ目の理由が、今シーズンに向けた準備期間の失敗にある。
最大の原因はロイスの負傷だ。彼はW杯直前の代表戦で負傷した影響で、シーズン前の準備が遅れた。さらに、彼は9月の代表戦でも怪我をして、復帰したのは10月18日のケルン戦から。今シーズンからオーバメヤンが本格的に1トップの位置で起用されるようになり、インモービレとラモスが開幕前に、さらに開幕後に香川が加わったのにもかかわらず、ロイスは新たな形で起用された選手や、新たにチームに加わった選手たちとともにプレーする機会が十分に得られなかった。
'11-'12シーズンのドルトムントの中心は香川だったが、現在のチームの中心はロイスである。彼を活かす形や彼が周りを活かす方法を作り上げていくには、もう少し時間が必要なのだ。