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マッドバムの快挙と混戦の終結。
~ワールドシリーズで見せた完封劇~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2014/10/31 16:30

マッドバムの快挙と混戦の終結。~ワールドシリーズで見せた完封劇~<Number Web> photograph by Getty Images

ロイヤルズとのワールドシリーズ第5戦で完封劇を見せたマディソン・バムガーナー。この試合は初球ストライク率80.6%で無四球と完璧な投球で、三塁を踏ませなかった。

1903年からのポストシーズン男たちをおさらい。

 ざっとおさらいをしておこう。

 1903年から1968年までは、ポストシーズンといえばワールドシリーズのみを意味した。1969年から1993年にかけてはリーグ優勝決定戦が加わった(1981年を除く)。1981年と1995年以降(1994年はストライキでシーズン中断)は、地区シリーズやワイルドカード・ゲームが加えられている。

 当然のことながら、先発投手の投球機会は増加の一途をたどっている。逆にいうと、打ち込まれる機会や失点の可能性はどんどん増えてくる。過去のポストシーズンを振り返ってみても、先発投手が圧倒的なパフォーマンスを見せたのはやはり1968年以前が多い。

 先に挙げたマシューソン以外にも、ウェイト・ホイト(ヤンキース1921年に3完投。2勝1敗。27回を投げて防御率0.00)、ホワイティ・フォード(ヤンキース。1960年に2完封。2勝0敗。18回を投げて防御率0.00)、サンディ・コーファックス(ドジャース。1965年に2完封。2勝1敗。24回を投げて防御率0.38)、ルー・バーデット(ブレーヴス。1957年に2完封。3勝0敗。27回を投げて防御率0.67)、スタン・コヴェルスキー(インディアンス。1920年に3完投。3勝0敗。27回を投げて防御率0.67)といった人たちが赫々たる戦果をあげている。

カーショーやウィーヴァーではなく、マッドバム。

 もちろん近ごろでも「ポストシーズン男」の系譜が途絶えたわけではない。1988年のオレル・ハーシュハイザー(ドジャース)は6試合(リリーフも含む)で42回3分の2を投げて3勝0敗、防御率1.05の数字を残した。1996年のジョン・スモルツ(ブレーヴス)も5試合で38回を投げて4勝1敗、防御率0.95の好成績を収めている。さらには、冒頭に紹介した2001年のカート・シリング。彼の場合は、6試合に先発して48回3分の1を投げて4勝0敗、防御率1.12の成績でダイヤモンドバックスを世界一の座に導いている。

 2014年のバムガーナーは、これら名投手に伍してひけをとらない内容の投球を見せた。自責点6、被本塁打3、与四球6はシリングとまったく同じだし、4勝1敗、被安打28もシリングの4勝0敗、被安打25と相似形だ。そうか、次から次へと椿事のつづいた2014年ポストシーズンだが、幕を閉じてみると、シーズン開幕前にささやかれていた「西高東低」「投高打低」の傾向が立証されることとなったわけか。ただし、証明したのは戦前予想されていたクレイトン・カーショーやジェレッド・ウィーヴァーではなく、25歳の新怪物マッドバムだった。混戦の1年を締めくくるにふさわしいヒーローの出現というべきだろう。

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