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ロイヤルズ旋風とGMの手腕。
~ワイルドカードからのリーグ優勝~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2014/10/18 10:40
オリオールズを破りワールドシリーズ進出を決めたロイヤルズの青木宣親。最終戦でも「2番・右翼」でスタメン出場し、チーム2点目のホームを踏んだ。
ロイヤルズを気長に再建した、デイトン・ムーアGM。
そんなロイヤルズを気長に再建したのが、'06年6月からGMに就任したデイトン・ムーアだった。ムーアはまず、ファームでの選手育成に力を入れた。アレックス・ゴードンやエリック・ホズマー、さらには「恐怖の9番打者」マイク・ムスタカス、ブルペンを担うグレッグ・ホランドやケルヴィン・ヘレーラといった主力選手は、そろってムーアの秘蔵っ子だ。
ムーアは、トレードも成功させた。スピードあふれる攻守を見せるロレンゾ・ケインとアルシデス・エスコバルは、'10年終了後にブルワーズからやってきた(グリンキーとのトレード)。エースのジェームズ・シールズと中継ぎの切り札ウェイド・デイヴィスは、'12年終了後にレイズから獲得した。そして今季は青木宣親の加入。
勝利の方程式は、「ナースティ・ボーイズ」の再来?
これら新旧勢力が噛み合って、ロイヤルズはここまで伸びてきた。なかでも特筆されるべきは、ヘレーラ→デイヴィス→ホランドとつなぐ救援投手陣の「勝利の方程式」だ。ポストシーズン8試合の3人の成績を累算すると、23試合に登板して25イニングス3分の2を投げ、防御率が1.05で奪三振が30個。つまり、ロイヤルズが6回までリードを保てばまず負けることはないという法則が、いまのところは成立している。
これはまるで1990年代の初頭、球界を震撼させた「ナースティ・ボーイズ」の再来ではないか。ロブ・ディブル、ノーム・チャールトン、ランディ・マイヤーズの救援トリオが1990年のレッズをワールドシリーズ王者に導いたことは記憶に新しい。足は速いし、ブルペンは強力だし、貧打のはずだった攻撃陣も絶好調だ。若さゆえの脆さはときおり見受けられるが、ロイヤルズ旋風はまだまだやみそうにない。