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「体が重い」もCL連勝に貢献の香川。
クロップも手放しで称賛した“創造性”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/10/02 12:55
相手ディフェンスの綻びをすばやく見つけ、的確なパスで攻撃を操った香川真司。ドルトムントのファンは、英雄の帰還を心から喜んでいることだろう。
ドルトムントの決定率はリーグワースト5。
しかし、その後もドルトムントはビッグチャンスを決められない展開が続いた。
『キッカー』誌の集計によると、ドルトムントがビッグチャンスをゴールにつなげる決定率は20.5%で、リーグで下から5番目という低調な成績だ。先制ゴールを決めたことで選手たちのプレッシャーは軽減されたとはいえ、相変わらずチャンスをゴールにつなげられないという課題が露呈していた。
ドルトムントがペースを握り、チャンスも作り続けていたが、後半の半ばまでスコアは1-0のまま動かなかった。置かれている状況を端的に表していたのが、後半23分の出来事だった。
このとき、1トップに入っていたイタリア人FWインモービレに対して、ベンチ前にいたクロップ監督がサイドに流れるようにと、ジェスチャーをまじえつつ指示を送った。
しかし、ベンチの脇にいたインモービレの通訳がその指示をすぐに訳して伝えなかったことで、クロップ監督が怒号を響かせる。筆者はベンチのすぐ後ろ、比較的声が聞きとりやすい位置に座っていたのだが、クロップ監督がなんと叫んでいるかは全く聞き取れなかった。言葉になっていなかったからだ。
ただ、クロップが強烈に怒っているということだけは、その形相と、まるで恫喝するかのような叫び方から瞬時に理解できた。リードしていたとはいえ、今のチームが置かれた状況はそれだけひっ迫しているのだ。
香川を起点に奪った追加点が、状況を好転させる。
しかしドルトムントの苦しい状況は、わずか1分後に打開された。
センターサークル付近にいた香川が、オーバメヤンからのパスをダイレクトで右サイドに展開する。これを受けたピシュチェクが、キーパーとディフェンスラインの間にクロスを送る。ファーサイドから走り込んできたラモスがこれに合わせ、ようやく追加点が生まれたのだ。
守備をかため、ドルトムントのミスを待ち、カウンターでのゴールを狙っていたアンデルレヒトも、2点差がついたことによって前に出てこざるを得なくなった。
相手が前に出てきたことで、攻撃陣にはスペースと余裕が生まれ、試合展開はドルトムントにとって理想的なものになった。