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「体が重い」もCL連勝に貢献の香川。
クロップも手放しで称賛した“創造性”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/10/02 12:55
相手ディフェンスの綻びをすばやく見つけ、的確なパスで攻撃を操った香川真司。ドルトムントのファンは、英雄の帰還を心から喜んでいることだろう。
チームの「創造性」を担うのは香川しかいない。
今季のドルトムントは、リーグ戦6試合を終えた時点で早くも3敗を喫し、失点数はリーグで3番目に多い。メディアはこぞってドルトムントの危機を叫び、低迷の理由を分析していた。2週間前にCL第1節のアーセナル戦で快勝したとはいえ、アンデルレヒトとのアウェーゲームを前に、監督や選手たちには、大きなプレッシャーがのしかかっていた。
もちろん低迷の原因はひとつではないが、攻撃面で指摘されていたのが「創造性」の欠如だった。4日前に行なわれたシャルケとのダービーでも、ボールは支配していたものの、攻撃に工夫が見られず、パス成功率は約72%に過ぎなかった。
そして、チームの攻撃の「創造性」を担うのは香川しかいない、とドイツメディアは一斉に指摘していた。
前半3分に早くも香川が見せた「機転」。
そんな重苦しい中で迎えた試合で、香川は序盤から攻撃に違いを生み出す。
前半3分、オーバメヤンのパスを中央の高い位置で受けた香川が、ボールを少しつつくと、浮き球のパスをディフェンスラインの裏へ送る。そこに飛び出していたインモービレがキーパーの動きを見て、冷静に蹴り込んでドルトムントに早くも先制点が生まれたのだ。
「シュートを打とうと思ったんですけど……」
その場面を香川が解説する。
「一瞬、前に選手がいるのが見えて、それがチロ(インモービレ)だったので。上手く(パスに)切り替えられたと思います」
現在ドルトムントが苦戦しているのは、優勢に試合を進めてチャンスを作りながらもゴールを奪えず、失点してしまうパターンが多いから。自信を失いかねない状態にある選手たちにとって、小さくない意味を持つゴールだった。