野ボール横丁BACK NUMBER
大谷翔平とダルビッシュは全く違う。
投球の不安定さが意味する「可能性」。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/09/27 10:50
キャッチボールでも、球種を変えながらフォームを気にしつつ調整をする大谷翔平。この細心さが、怪物にさらなる伸びしろをもたらすだろう。
神経質なぐらい大谷が気にする、投球フォーム。
その試合、ダルビッシュは腰に負担がかからないようステップ幅を狭め、ほとんど上体だけで投げていた。中垣が説明する。
「スタンスを狭めたぶんは、他の動きでカバーしていた。極論ですけど、ダルビッシュならキャッチボールさえできれば試合はつくれるんじゃないですか」
大谷が時折見せる、フォームを固めるのに苦戦する姿は、確かにそんなダルビッシュとはじつに対照的だ。
練習中ボールを持てば、しきりにセットポジションと、そこから足を上げたときの形を確認する。キャッチボールのときもそうだ。しっくりこないと初めからやり直す。また、暇さえあれば1人で壁当てをし、やはりフォームをチェックしている。
打撃フォームをチェックする姿はほとんど見かけたことがないが、投球フォームはいつも神経質なぐらいに気にしている。
現時点での不足は、つまり可能性の裏返しである。
大谷はここ4試合、その不安定感を象徴するかのように、いいときと悪いときを交互に繰り返している。
9月13日のオリックス戦、1-0で完封勝利を挙げたかと思えば、21日の楽天戦では自身ワーストとなる6回途中7失点でマウンドを降りた。
中谷が言う。
「大谷が、ダルビッシュと同じくらいのセンサーを持っているかというと、そこはまだまだですね」
ただ、それは同時に「まだまだ」大谷が可能性を秘めているということでもある。