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地方大会、甲子園で続く大逆転劇。
背景に“序列”への過剰な意識が? 

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阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/08/21 10:40

地方大会、甲子園で続く大逆転劇。背景に“序列”への過剰な意識が?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

8点差を逆転しての勝利は大会記録に並ぶもの。前回は1997年大会の1回戦、市立船橋(千葉)が文徳(熊本)を逆転した17-10の試合だった。

逆転したのは、いずれも「格上」の学校だった。

 それは逆転して勝ったほうが、実力的に上とみなされていた実績のある学校だったことだ。福島の聖光学院は前年まで7年連続して県予選を勝ち抜いている。甲子園でも4年前にはベスト8まで行った。対する日大東北はしばらく甲子園から遠ざかっている。ライバルだが、聖光の壁がなかなか超えられない。石川も似ている。星稜は前年まで16回も甲子園に行っている。準優勝もあった。箕島との名勝負や松井秀喜の敬遠騒動も。甲子園では「顔」といってよい。対する小松大谷はあと少しで甲子園に届かない。ライバルだが壁を越えられないのは日大東北を思わせる。

 8点差逆転の大垣日大は、甲子園での強豪校といえるほどの実績はないが、阪口監督は長く東邦高校を率いて、選抜での優勝経験もある名物指導者である。対する藤代は常総学院などの壁をなんとか乗り越えて久しぶりにやってきた県立高校。

 逆転された側から見れば、リードはしていても、相手の実績を考えればずっと緊張する戦いだったのではないか。普通ならセーフティーリードと思われる得点差でも、1、2点詰められると、影が大きく見えてしまう。

相手が普通の高校生に見えなくなってしまう。

 結局追い詰められる側は、相手を見てしまうのだ。もし相手が自分たちと同じ程度の実績の学校なら、おそらくこうした逆転劇は起こらないだろう。相手を見ても、そこには自分たちと似た普通の高校生がいるだけなのだから。ところが、名門だとか名監督だとかのレッテルのついた相手、額縁で飾られた相手の姿を拝むと冷静さは失われてしまう。想像上の相手と戦って、ひとり相撲で負けてしまった部分が大きいのではないか。

 8点差をひっくり返した大垣日大が2戦目でどんな試合をするか、興味を持ってみた。1回戦ほどではないが、やはり初回に3点、2回に1点取られて0-4。そこから2点返して2-4。逆転のお膳立てはそろった。相手も2点返されると、妙に平常心を失ったようで、強引な盗塁失敗などを犯してスタンドをざわつかせる。

【次ページ】 若い人ほど、言葉に惑わされる。

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