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地方大会、甲子園で続く大逆転劇。
背景に“序列”への過剰な意識が?
posted2014/08/21 10:40
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
7月の末、福島に行った。駅に着いて新聞を買うと、地元紙もスポーツ紙も前日の高校野球の決勝を大きく扱っていた。2-6で負けていた聖光学院が9回裏、4点を取って追いつき、11回裏に勝ち越し点をあげてサヨナラ勝ちしたというのだ。9回の4点差をひっくり返したのだから、大きく扱う気分もよくわかる。歴史に残るなどというのは大げさだが、ちょっとした語り草になるのは間違いない試合だった。
しかし、その日の夜のニュースでさらに驚かされた。石川県大会の決勝で星稜高校が小松大谷に0-8とリードされていたのを、9回裏だけで9点取って勝ったというのだ。福島の試合をはるかにしのぐ大逆転で、翌日の新聞はどこも大きく扱っていた。
9回の逆転劇は珍しくはないが、8回まで2安打しか打てず、ほぼ完ぺきに抑えられていたチームが、9回だけで8点差をひっくり返すなんて聞いたことがない。それも力の違う学校が当たりやすい予選の序盤ではなく、勝ち上がってきた同士がぶつかる決勝での話だ。これは大げさではなく「歴史的勝利」だ。予選でこんなことが立てつづけにおこるのだから、甲子園の本大会がはじまったら、同じような驚く試合が見られるかもしれない。
1ラウンド序盤にダウンを2度したようなスタート。
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そう思っていたら、ほんとうに起こった。1回戦の大垣日大と藤代の試合で、1回表8点を取られた大垣日大が、その裏4点を返して反撃をはじめ、7回、8回には3点ずつ取ってついに逆転、12-10のスコアで勝ってしまった。1回表の8点! 1ラウンドの序盤にダウンを2度奪われ、3度目も間近というところでゴングに救われたようなものかもしれない。甲子園での逆転の場面はいろいろ見てきたが、点差の大きさでいえば、これが最大かもしれない。これを書いている時点はまだ大会半ばだから、この先もっと途方もないことが起きるのではないか。
それにしても。少し頭を冷やして、こんな逆転試合が起こる理由を考えてみた。投手の状態や失策の有無、采配の妥当性など細かいことは実際に取材していなかったので、ここでは触れない。共通点に注目した。