野球善哉BACK NUMBER
“負けゲーム”を勝った日本文理。
「自由」が持つ危うさと爆発力。
posted2014/08/21 15:40
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
この試合は、日本文理(新潟)にとって“勝ちゲーム”だったのか、“負けゲーム”だったのか。
敗れた富山商の主将・横道詠二はいう。
「さすがは日本文理だなと思いました。ただ、いつもは攻めてくるはずの日本文理が結構バントをしてきたので、焦っているのかなとも思いました」
大会第11日の3回戦第1試合、富山商vs.日本文理の「北信越決戦」は、日本文理が1点ビハインドの9回裏1死一塁から、6番・新井充が起死回生の逆転サヨナラ本塁打。この一発で6-5とし、もつれた試合に決着をつけた。結果的には、日本文理の得点力の高さが出た試合だったといえる。
相手投手がいいピッチングをしても、得点する力。
戦前の注目は1、2回戦で粘投をみせた日本文理の飯塚悟史と、2試合1失点の富山商の森田駿哉によるエース対決だったが、その点でも日本文理が試合をリードした。
2回裏、日本文理の先頭打者、6番・新井が四球で出塁。1死のあと、8番・鎌倉航の場面で、相手捕手がボールをはじいた隙に新井が二塁へ進む。鎌倉は三振するが、最後の球がワンバウンドしたために、振り逃げを防ぐために捕手が一塁へ送球。その間を見逃さなかった新井が三塁へ進んだ。
そして、9番・飯塚が右翼前適時打を放つ。富山商の森田はスライダーを低めに集めるのが上手いだけに、新井が三塁へ進んだことが投球を甘めにさせ、それを飯塚が上手く打ったのだ。
5回裏にも、1番・星兼太が二塁への内野安打で出塁。森田のワンバウンドの球を捕手が見失っている間に星が二塁へ進み、3番・小太刀緒飛(こだち おとわ)の適時打で1点を追加したのだ。
6回表に1点を失うが、7回裏にも四球で出塁の黒台騎士(ないと)が盗塁を決め、これが悪送球を誘って三進。ワイルドピッチで1点を追加した。
相手投手がいいピッチングをしてきても、隙をかいくぐって得点を挙げていく。打つだけではない得点力の高さが日本文理が持つ強さの一つだ。