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W杯にSNS部門があったら受賞確実?
米サッカー協会の斬新な広報戦略。

posted2014/07/16 10:30

 
W杯にSNS部門があったら受賞確実?米サッカー協会の斬新な広報戦略。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

アメリカサッカー協会のツイッターアカウント。現在は「応援をありがとう」の文字が。

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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 ワールドカップでは、各試合毎に「マンオブザマッチ」、得点王には「ゴールデンブーツ賞」など様々な賞が選手に与えられるが、もし「ソーシャルネットワーク部門」が設けられたら、米国サッカー協会は確実に候補にあげられるだろう。

 アメリカ代表の決勝トーナメントに進出も快挙だったが、それに負けないくらい今大会での米国サッカー協会のデジタルマーケティング戦略は斬新なものだった。

 今年の3月、米協会は世界的なマーケット会社「VML」と契約し、デジタルコンテンツを一新、FacebookやTwitter、 InstagramなどSNSの再構築を行なった。同社との契約の理由を「クリエイティブさ、プロ精神、そして多様性で群を抜いている。ファンの皆さんが米国代表を応援する楽しさを共有できるサイト、ソーシャルメディアなどを構築していく」と同協会のコミュニケーションディレクターであるニール・ビース氏は語り、VML社の顧客管理を担当するチャック・シール氏も「我々の目標は、ファンと共鳴できる魅力的なコンテンツを作成し、歴史的なイベントをサッカーファンと共有すること」と応じた。

PVから選手たちの私服姿、そしてロッカールームまで。

 その言葉通り、米協会のTwitter投稿内容は多岐に渡った。

 各試合前には、これまでのプレーをまとめたロックグループさながらのプロモーションビデオから、練習風景、選手たちの私服姿、パブリックビューイングに集まった米国の人々の写真などが投稿された。他にも、リンカーン大統領にユニフォームを着せたり史跡を星条旗カラーにしたコラージュ画像、芸能人や政治家が投稿した米国代表に関するツイートの紹介など、米国代表に関するありとあらゆる情報が凝縮されていた。

 もちろん、試合が始まればプレー内容や結果も詳細にリポートする。チーム帯同の広報スタッフがチームの状況を担当、米国に残ったスタッフがその他の分野を担当した。

 試合前の誰もいないロッカールームに整然と並べられたユニフォームからは静かな緊張感と高まる士気が、試合後のバス車中の選手の笑顔からは安堵や喜びが伝わってきた。

 どの投稿も、ファンが選手と行動しているような疑似体験をさせてくれるようなものばかり。米協会のスタッフはメディアが立ち入れない内部の写真までも共有し、彼らがスローガンとして掲げた「One Nation. One Team. (一つの国、一つのチーム)」を体現していた。

【次ページ】 五輪では厳しい規約で広報活動が縛られがちだが……。

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