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W杯にSNS部門があったら受賞確実?
米サッカー協会の斬新な広報戦略。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2014/07/16 10:30
アメリカサッカー協会のツイッターアカウント。現在は「応援をありがとう」の文字が。
かつてはサッカー不毛の地と呼ばれた国が……。
また米国対ベルギー戦に関するツイート数は9100万件に上るなど、ソーシャルメディアの影響力を見せつけた。
「米国サッカー協会はチーム一丸で今大会の盛上げに努力した。例の手紙を見せた時、クリンスマン監督も『面白いじゃないか』と笑顔でサインしてくれた。皆がアイデアを出し合って、ファンが興味を持ちそうなことは全て利用した」とビース氏も胸を張る。
米国では野球、バスケット、アメフト、ホッケーが4大スポーツと呼ばれ、かつてはサッカー不毛の地とも呼ばれていた。だが代表チームは地道に強化育成され、ワールドカップは1990年イタリア大会以降、7大会連続出場中。そして前回の南アフリカ大会もグループリーグ首位で決勝トーナメントに進出したが、熱烈なサッカーファンでない限り、ほとんどのアメリカ人が「対戦チームも結果も記憶にない」と口を揃える。
だが今大会では、勝利目前で同点にされたポルトガル戦、全員サッカーで戦ったドイツ戦、敗れはしたもののゴールキーパーのティム・ハワードの好セーブやチーム全体が勝利への飽くなき執念をみせたベルギー戦など、W杯の記憶はアメリカ人の脳裏にしっかりと焼きついたことだろう。
「我々の成功は、一朝一夕に起きたことではない」
今後の課題は、ワールドカップで獲得したサッカーファンを、国内リーグ「メジャーリーグサッカー」やワールドカップのない年の代表戦などにどう取り込むかだ。
「今大会の我々の成功は、一朝一夕に起きたことではないんです。20年、25年と先達が長い年月をかけて積み重ねてきたものが、大きく花開いただけなんですよ。だから、我々は今行なっている活動を地道に行なっていくだけです。メジャーリーグサッカーとも綿密に連携し、サッカー発展のために努力していきますよ」(ビース氏)
サッカー不毛の地から、サッカー先進国へ。ソーシャルメディアを利用した米国サッカーの挑戦は、まだ始まったばかりと言えそうだ。