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W杯にSNS部門があったら受賞確実?
米サッカー協会の斬新な広報戦略。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2014/07/16 10:30
アメリカサッカー協会のツイッターアカウント。現在は「応援をありがとう」の文字が。
五輪では厳しい規約で広報活動が縛られがちだが……。
国際大会によっては、選手や関係者にソーシャルメディア使用に関して、厳しい規約が設けられることもあり、情報の提供量が極端に少なくなったりする。
たとえばロンドン五輪では、選手や関係者は、選手村や会場で撮影した写真や動画の投稿や、商標登録されている「オリンピック」や「ロンドン2012」の言葉をソーシャルメディアで使用することが禁じられていた。
FIFAにも似たような規約があるが、IOCに比べるとかなり自由に広報活動ができる。米協会は「ブラジル2014」という言葉の代わりに代表のスローガンを作るなど様々な工夫をこらして広報活動を展開した。
「今大会はソーシャルメディアが大きな鍵を握る、ソーシャルメディア・ワールドカップになると予想していた。でも、人々の反応の速さには予想以上だった。2010年の南アフリカ大会の際は、初戦が終わった後からじわじわと興味が広がったけれど、今回は大会が始まると同時に爆発的な反応があった」
前述のビース氏はそう話す。
米協会の公式ツイッターフォロワーは現在約123万人だが、ワールドカップの期間中に40万人以上がフォローを開始。試合のある日は平均150件、試合のない日でも15件ほど投稿を続け、ファンの心を惹き付けた。
ちなみに日本代表の公式アカウントのフォロワーは約57万人、ツイートは6月、7月で合計38件と、ソーシャルメディア使用の差は歴然としている。
「死の組」を勝ち抜き、国内でサッカー熱が沸騰。
米協会のソーシャルメディア利用が米国民に広く知れ渡ったのは、グループリーグの最終戦、ドイツ戦の前。
「死の組」と呼ばれたグループGに入った米国は、初戦でガーナに勝利、2戦目はポルトガルと引分ける予想外の戦いぶりで、ドイツ戦は決勝トーナメント進出がかかる大一番となっていた。
大会前にユルゲン・クリンスマン監督が「我々は最高のゲームをしたいと思っているけれど、ワールドカップで優勝するほどの力はない」と発言したことで、国内には「応援しても無駄」という空気が流れていたが、強豪相手に堂々たる戦いぶりをみせ、ドイツに引き分け以上で決勝トーナメント進出という筋書きが見えた頃から、国内ではサッカー熱が沸騰した。