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W杯にSNS部門があったら受賞確実?
米サッカー協会の斬新な広報戦略。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2014/07/16 10:30
アメリカサッカー協会のツイッターアカウント。現在は「応援をありがとう」の文字が。
「米国代表応援のための休暇届け」という遊び心。
ドイツ戦を前に、米協会は「医師の診断書」ならぬ「米国代表応援のための休暇届け」を作成し、ソーシャルメディアにアップした。
「米国にとってドイツ戦は非常に重要な戦いになります。休みのせいでビジネスが滞るのは承知だが、大切な目的での休みであることは、私が保証します。我々が次のラウンドに進むためには国全体のサポートが必要です。良き上司の皆さん、あなたも休みを取ったらいかがでしょう」
「休暇届け」にはそう書かれた手紙が添えられ、最後にクリンスマン監督直筆のサイン入りという、憎い演出つきだった。
その後クリンスマン監督も自身のTwitterで、「そうそう、明日はユニフォームを着るのを忘れないでね」と米協会に突っ込みをいれるなど、選手や関係者がいい雰囲気で大会に臨んでいる姿が垣間見えた。
この手紙は瞬く間に米国中に拡散されたほか、多くのメディアでも取り上げられた。試合当日、ニューヨーク州政府は知事のお墨付きでお昼休みの休憩が通常の1時間から2時間に延長される異例の措置がとられたほか、ホワイトハウス広報も「アメリカ代表を応援中なもので……」と空っぽの会見場の写真をアップしている。
オバマ大統領をはじめとした政治家、メジャーリーグ、アメフトなどのチームなども「今日は皆で米国代表を応援しよう!」と応援ツイートをするなど、国を巻き込んでのサッカーフィーバーが巻き起こった。
スーパーボウルを上回ったとも言われる視聴者数。
応援休暇届けの効果があったのか、ドイツ戦のテレビ視聴者は1070万人、ネット視聴者は1700万人に上った。これは試合が平日の昼間(東海岸は正午、西海岸は朝9時にキックオフ)だったということを考慮すれば、かなり高い数字と言えるだろう。
ちなみにスポーツチャンネルのESPNによると、日曜日の昼間に行なわれたポルトガル戦のテレビ視聴者は1820万人で米国でのワールドカップ史上最高視聴率、スポーツ視聴率歴代でも3位を記録したほか、決勝トーナメントのベルギー戦でもテレビ視聴者は1649万人を記録した。ネット視聴者とツイート件数はアメフトのスーパーボウルを上回ったとも言われている。