野球クロスロードBACK NUMBER
ロッテ移籍も浮上の糸口はつかめず。
涌井秀章に今何が起こっているのか?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/07/07 11:05
7月6日時点で3勝7敗、防御率は4.22と結果がついてこない涌井秀章。被安打や四死球が目だって多いわけではなく、ランナーがいる状態での投球が課題になっている。
西武時代と同じく、中継ぎへの配置転換の可能性が。
「バッターに向かう気持ちが薄れている。あいつだけ特別扱いするわけにはいかないので、中(中継ぎ)に入れる可能性もある」
先発失格――。
まるで、西武での最後の2年間がフラッシュバックしているようだ。
'12年は抑えとしてそれなりの適性を発揮したが、'13年は先発のチャンスをことごとく無駄にし、当時の渡辺久信監督から「これだけ試合を壊しては先発として失格」と烙印を押され、中継ぎに“降格”させられてしまった。その屈辱を、今、新天地でも味わわされるかもしれないのだ。
そして“背水登板”となった7月6日の日本ハム戦。2回に2点を先制されると、逆転した直後の5回には同点とされ、6回3失点でマウンドを降りた。涌井に勝敗こそつかなかったがチームは延長戦の末に敗れた。
「先制を許したのに野手の人が逆転してくれて。それでも次の回に踏ん張れずもったいなかったです」
涌井は、言葉少なに投球を振り返る。
不合格とは言えないが、及第点には程遠い。グレーゾーンの投球内容だった。
ランナーを背負うと極端にリズムが悪くなる。
「先制された後に頑張ってくれたら、そのままトントン進んだんだろうけど。頑張ったとはいえ、このままだと厳しいでしょうね」
試合後、伊東監督はもどかしげな表情で涌井のパフォーマンスを総括しながらも、中継ぎ降格を明言しなかった。
それには理由があった。
不安定な投球を続ける涌井の課題を、改めて認識することができたからだ。
課題とは投球のテンポ。
走者がいない場面ではリズムよくストレートを投げカウントを稼ぎ、ツーシームなどの決め球で凡打に打ち取ることができるが、走者を背負うとリズムが極端に悪くなるのだ。
「前から言っていることなんですよね。涌井もランナーを出すと不安なのか分かりませんけど」と伊東監督は、苛立ちを抑えながら語る。「このままだと厳しい」と称した言葉の裏には、この課題があるのだろう。
この試合、失点した回だけでも、それは如実に表れていた。