ブラジルW杯通信BACK NUMBER
サッカーはどこまで科学できるのか。
データと直感、その“複雑”な関係。
posted2014/07/04 16:30
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Getty Images
長期の海外取材を続けていると、時代の変化を実感することがよくある。
特に感じるのはテクノロジーの進化だ。昔はインターネットなどなかったし、宿を予約するにも、直接電話をかけてから、ファックスで申込書を送ったりしていた。車で移動しながらひたすら電話をかけ続け、夜中にようやく木賃宿に転がり込んだことも二度や三度ではない。
でも今は違う。ネットで何から何まで予約できるし、土地勘がない場所でも目的地になんとかたどり着ける。
先日はベロ・オリゾンチでブラジル対メキシコ戦の取材を終え、スタジアムからメディアホテルにシャトルバスで移動し、さらに深夜バスのターミナルまでタクシーで急行したが、そこでもテクノロジーの恩恵を受けた。
街中で拾ったタクシーの運転手は、ターミナルの名前と住所を念押しするたびに、「Sim(うん)」と言いながら、逆にどんどん見当外れの場所に向かっていく。このままでは到底バスに間に合わないということで、同行しているカメラマンのT君と僕は、自分たちがナビ役を務めることを決意した。au のiPadはブラジルでもLTEのローミングに対応しており、たとえwifiが全く飛んでいない環境でもネットに接続して、リアルタイムでガイドができるからだ。
この方法のおかげで、ターミナルには出発の5分前に到着。見ず知らずの土地、しかも特に治安が悪いとされるバスターミナルで、怯えながら一夜を過ごさずにすんだ。
W杯の会場でも肌で感じる、技術の進歩。
技術の進化は、W杯の会場でも肌で感じることができる。今大会はゴールラインテクノロジーが話題になっているが、スタジアムの記者席に据え付けられているモニターのチャンネルを切り替えると、実はリアルタイムでスタッツ(統計データ)を一覧できるようになっている。
出場選手のリストの脇には、走行距離、パスの本数、成功率、シュートの本数などが示され、画面の下半分にはタクティカルマップ(ピッチ上の実際のポジション)が時間帯別に更新されていく。残念ながら写真は紹介できないが、「ご参考用」という但し書きが着いているのを見ると、メディア向けのサービスであることがわかる。