フットボール“新語録”BACK NUMBER

ミュラー、ロッベン、そして本田。
W杯のゴールを“背中”で検証する。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTsutomu Takasu

posted2014/06/23 10:40

ミュラー、ロッベン、そして本田。W杯のゴールを“背中”で検証する。<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

1-1で迎えた後半8分、後方から送られたパスをロッベンが芸術的なトラップ。そしてスペインのセルヒオ・ラモスを巧みなフェイントでかわし、得意の左足でゴールに突き刺した。

“ごっつぁんゴール”の陰にある特別な動き。

 ドイツ代表のシュールレがペナルティエリアの右角からドリブルで侵入して右足で鋭いクロスをあげ、GKパトリシオが弾いたところを、斜めに走り込んで来たミュラーが押し込んでゴールが決まる。いわゆる“ごっつぁんゴール”だが、西本はそこに特別な動きを見出していた。

「ゴール前に詰めてキーパーが弾いたボールへの対応ですが、ミュラーは走り込んで来た勢いを重心を高く保ったまま、左右左右と4回小さくステップしてバランスを保ち、その動きによってボールに反応することができました。

 もし勢いを止めるために両足で踏ん張ったり、重心が落ちてしまっていたら、素早く足を出すことは難しかったでしょう。こういう体勢でのゴールを何度も経験して、何をすべきかを知っているんでしょう。だから、長い足を左右にステップしてバランスを保ち、瞬時に足を出せる体勢を取れていたんだと思います」

重心を高く保ち、足をあらゆる方向に出す。

“ごっつぁんゴール”をコンスタントに決めるには、こぼれてきたボールに対して、自在に足を出せなければならない。その反応の早さとカバーできる範囲が勝負を決める。

 では、どうすればそれを実現できるか? すでに上述したように、広背筋がうまく働き、骨盤が立っていることが鍵になる。

 止まった状態で背筋を伸ばすのは誰でもできるが、相手にぶつかられたり、トップスピードで動いていたり、もしくは急ストップしたときに、この姿勢を保つのは簡単ではない。だが、この3点目の場面で、ミュラーは両足をコンパスのように開いて横方向にタタッ、タタッと地面を叩き、そのステップワークで勢いを吸収させた。それによって骨盤が立った状態を維持でき、すっと足を出すことに成功した。ミュラーが“ごっつぁんゴール”が多いのは、重心を高く保ち、骨盤を立て、足をあらゆる方向に振り出せるからなのだ。

【次ページ】 ファンペルシの強烈な広背筋が可能にすること。

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