フットボール“新語録”BACK NUMBER
ミュラー、ロッベン、そして本田。
W杯のゴールを“背中”で検証する。
posted2014/06/23 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Tsutomu Takasu
「ロッベンはステップ毎に背中を反らす動作が入り、その度、相手が『打つのかな?』と反応していました。 つまり背中の反りがフェイントになっている。面白い動きです」
西本直(トレーニングコーチ)
W杯はスーパープレーの宝庫だ。特にゴールシーンは世界最高レベルの技術が凝縮されており、美術品を見ているかのような優美な気分にさせてくれる。
ただし、一瞬のプレーの中で「何が起こっているか?」を見極めるのは、たとえスロー映像を駆使したとしても難しい。それこそ美術品と同じく専門家による“鑑定”が必要だ。
今回はW杯のグループリーグ初戦で生まれたスーパープレーを、「体の使い方」という視点でとらえてみたい。このコラムではお馴染みの西本直トレーナーに分析をお願いした。
広背筋と骨盤が、柔らかい動きを可能にする。
西本理論のエッセンスを一言で説明するのは難しいが、あえてそれに挑戦すると「背中を見る」ということだ。人体における最も大きな筋肉は、背中にある広背筋である。さらに広背筋は上半身と下半身に筋肉の終点があり、両者をつなぐ役目も担っている。この筋肉をいかにうまく使うかで、動きの質が決まってくる。
たとえば広背筋がうまく働いて背筋が伸びると、骨盤が立ち、股関節の自由度がアップする。すると最初の一歩をスムーズに踏み出すことができ、ネイマールのような柔らかい動きが可能になる。より詳しく知りたい方は、西本のブログを参照してほしい。
では、実際のプレーを見てみよう。まずはポルトガル戦でハットトリックを達成した、ドイツ代表のミュラーの3点目のゴールだ。