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フランスの好調を牽引するベンゼマが、
W杯開幕前に語っていた自身の歩み。
posted2014/06/23 10:55
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
これからお届けするのは、6月15日のホンジュラス戦で2ゴールを決めたカリム・ベンゼマのインタビューである。フランク・リベリーの大会直前の戦線離脱で、26歳の若さながらチームリーダーのひとりとしてベンゼマはこの大会に臨む。
4年前の南アフリカ大会では、最終候補のリストにも残らなかった彼が、1222分代表無得点という不名誉な記録を乗り越えて、どうして復活したのか。レアル・マドリーへの移籍以来、どんな軌跡をたどってここまで成長を遂げたのか。
インタビューをおこなったのは友人のカリム・ベン・イスマイル。長いインタビューで、これを読めばベンゼマの全てがわかる、とは言わないが、興味深いものであるのは間違いない。
――レアル・マドリーでは完全に開花した印象です。朝、シャワーを浴びているときや、車で練習に向かうときなどにも、自然と鼻歌が出るのではありませんか?
「(笑いながら)そんなことはないよ。まあいい歌があれば歌ってはいるけど。ともあれ僕のことを知れば知るほど、人前でのオフィシャルな姿とプライベートなものとが別であるのがよくわかるはずさ。リラックスしているときは、僕もよく冗談を言うし人の悪口も言う。騙すことだってあるよ。
たしかに今の生活は満ち足りている。朝は起きると娘(2月3日に生まれたマリア)にキスをして、抱き上げるんだ。幸せな気持ちで練習に向かう。マドリードの街もまるで自分の家のように感じている」
最初にマドリードにやってきたときは、目がくらんだ。
――それでも練習に出かけるのが億劫な朝もあるのでは?
「もちろんあるさ。負けた日の翌朝とか。でもレアル・マドリーでプレーできるのは、喜びであり大きな誇りだ。世界最高のクラブだし、僕自身が5年間ここでプレーする間に、様々な困難を乗り越えてきたからね。
最初にここにやってきたときは、まるで夢を見ているようだった。同時に苦しくもあった。まだ21歳で、家族のもとを離れるのは初めてだったし、オリンピック・リヨンの友人たちと別れるのもそうだ。簡単じゃなかったよ。自分にはこう言い聞かせていた。『ずっと夢見ていたクラブに来ることができたんだから頑張らなきゃいけない』ってね。でも偉大な選手たちを身近で目の当たりにして、すっかり目がくらんでしまった。リヨンとは環境があまりに異なっていた。難しかったよ……」