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ソチの運営費は過去最高の5兆円!?
「冬季五輪」のあり方を考える。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2014/06/08 10:40

ソチの運営費は過去最高の5兆円!?「冬季五輪」のあり方を考える。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

コース以外には雪が見られない、ソチ五輪でのスキージャンプ会場。人工降雪機などで競技はなんとか行なわれたが、5兆円というコストは候補都市に二の足を踏ませる額だったに違いない。

気候と同時に、都市の規模も必須の条件だ。

 では、雪不足に悩まされにくい寒冷の地でやればよいのかというと、今度はそうした地域にどれだけオリンピック開催能力のある都市があるかという問題が出てくる。今日のオリンピックのあり方を考えれば、一定以上の大都市でなければ開催は困難だからだ。

 この問題には、オリンピックの規模が拡大してきたことがかかわっている。国際オリンピック委員会(IOC)は、夏季オリンピックについてはたしかに大会規模を抑制する方向で動いてきた。だが冬季に関しては、まだまだ拡大する余地があると考え、それを実行してきた。ソチで大幅に新種目が採用されたのもその表れだ。

 ソチ五輪と言えば、開催費用として5兆円強が投じられたと言われる。夏冬のオリンピックを通じて過去最高の数字であり、2012年のロンドン五輪の4倍以上になる額だ。先に記したように、本来ウインタースポーツの地ではなく、競技施設から交通インフラまで一から開発しなければいけなかったこと。さらに降った雪を大会に備えて備蓄しておかなければならなかったり、人工降雪機をフル回転し塩とドライアイスなどの工夫で雪面を維持したことなども費用をふくらませた。

「ウインタースポーツへの理解」という観点も?

 ソチは冬季オリンピックを開催するには特殊な場所であったかもしれないが、その費用の膨らみ方を見て、撤退という決断をした都市もあると見られている。

 いずれにせよ、ビジネスチャンスを求めての冬季五輪における拡大路線が、開催できる都市を限定するようになったという事実は否めない。冬季オリンピックをこの先も継続していくためには、大会のありようをどうしていけばいいのか、あらためて考えていかなければいけない時期なのかもしれない。

 ただ1つ言えるのは、過去、選手や関係者の話を聞いていて、そこにおおよそ共通している事実があるということだ。それは、自らスキーやスケートなどを楽しむ人々がいたり、観戦を楽しむ人々のいる都市、つまりウインタースポーツへの理解がある都市での五輪は、選手の満足度が高いということだ。だから、例えばバンクーバーを「楽しかった」という選手は多かった。今後を考えていく上で、そういう視点があってもいいのではないか。

 まずは2018年の平昌五輪が次の冬季オリンピックだが、どのような大会となるだろうか。

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