MLB東奔西走BACK NUMBER
メジャーのデータ野球が“新時代”に!
極端な「シフト守備」が全米に浸透。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/05/19 10:30
メジャーでは近年、極端なシフト守備が増えている。写真は、昨年4月、メッツ対ロッキーズ戦のもの。打者のカルロス・ゴンザレスに対して、メッツはライトが前進するという、シフト守備を行なった。
左打者にこそシフト守備が有効。
それではシフト守備を頻繁に採用されている上位の打者についてみてみよう。
昨シーズン100回以上シフト守備をされた選手は24人いるのだが、そのうち右打者は1人、両打ち打者は4人のみ。あとはすべて左打者が並んでいる。それだけ左打者に圧倒的に有効だということになる。
最もシフト守備の回数が多かったのが、デビッド・オルティス選手で338回。
彼の通常時のBABIPは.341なのに対し、シフト守備採用時は.284まで下がっている。シフト守備がオルティスの多くの安打を奪っているのがわかるだろう。
さらに昨年ア・リーグの二冠王に輝いたクリス・デービス選手に至っては、通常時は.410のBABIPを記録しているのにシフト守備を採用されると(昨シーズンで計235回).294まで急落している。
定着し、さらなる進化を遂げるデータ野球。
それでは、なぜシフト守備がこれだけ重宝されるようになったのか。それは情報化社会によってもたらされた様々な種類の膨大なデータを、メジャーリーグ全体が積極的に取り入れていったからに他ならない。
メジャーリーグではかなり以前から、情報処理の専門企業と提携しているチームが多かった。どのチームも各カード初戦の試合前には必ず投手、野手に分かれてミーティングを行うのだが、これらの企業から提供されたデータが常に活用されていたのだ。
リーグの半数以上のチームにデータを提供している『Baseball Info Solutions』という企業があるのだが、この会社では2010年から選手たちの打球の方向などをデータ収集し、本格的なシフト守備に関するノウハウの蓄積を行なってきたそうだ。
こうした背景があるからこそ有効なシフト守備が実現できている。
もちろんこういった情報量の少ないWBCなどの短期決戦の国際試合で、極端なシフト守備を採用することは難しいだろう。
しかし、メジャーで採用されている最新戦術が各国に広まり、野球における内野手の概念が劇的に変わりつつあるのは、間違いない。