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メジャーのデータ野球が“新時代”に!
極端な「シフト守備」が全米に浸透。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/05/19 10:30
メジャーでは近年、極端なシフト守備が増えている。写真は、昨年4月、メッツ対ロッキーズ戦のもの。打者のカルロス・ゴンザレスに対して、メッツはライトが前進するという、シフト守備を行なった。
シフト守備で「インプレー打率」が劇的に下がる。
このデータで重要な指標になっているのが、「BABIP(Batting Average on Balls in Play)」だ。ウィキペディアによると「インプレー打率」と訳されているようだが、要するに本塁打以外でグラウンドに飛んだ打球だけで打率を計算したものだ。
計算式は(安打数-本塁打数)÷(打数-奪三振数-本塁打数+犠飛数)となる。この数値を使ってシフト守備の有効性を検証しているのだ。
2013年シーズンではオリオールズの470回を筆頭に、他の4チームが400回以上もシフト守備を採用しており、そのすべてのチームが相手のBABIPを下げることに成功している。
オリオールズの場合、通常時の相手チームのBABIPが「.296」なのに対し、シフト守備採用時には一気に「.279」まで下がっており、他のチームでも、
レイズ(シフト守備機会466回)「.297→.253」
ブルワーズ(425回)「.298→.287」
パイレーツ(422回)「.299→.287」
アストロズ(407回)「.312→.310」
といった数値が出ていた。
「シフトが有効な打者」とは?
中にはカブス(.279→.312)やヤンキース(.307→.325)のように、シフト守備を採用した時の方が逆にBABIPを上げてしまっているチームも存在するが、多かれ少なかれ全30チームがシフト守備を採用し、そのうち22チームが相手のBABIPを下げることに成功している。
これだけでも十分に積極的なシフト守備が有効であることは証明されていると思う。
それではどんな打者に対してシフト守備が有効なのだろうか。これについても記事の中で、シフト守備を使用された打者別にデータ化されている。
それによると、一回でもシフト守備を取られた選手の総数は300人を超えている。
その中でもシフト守備を一度だけしかされていない打者が57人もいることを考慮すると、単に特定の打者への対応に留まらず、試合の状況によって臨機応変に採用されていることが理解できる。