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「被害」と「処分」のバランスは?
後藤浩輝騎手の再びの落馬に思う。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/05/02 10:40
フェイスブックではコルセット姿の写真とともに「後藤浩輝、ちゃんと生きてます。皆さんご心配とご迷惑をかけてしまい本当にごめんなさい」と綴られていた。
同じ騎手が、同じ騎手に対して再度起こした妨害。
同じ騎手が、同じ騎手に対し、再度走行妨害をし、落馬事故に至った。
これは厳然たる事実だ。
岩田に科せられた4日間の騎乗停止をどう見るか。2年前の走行妨害のときも同じく4日間だった。
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これは、馬の動きが小さい場合などの2日間よりは重く、悪質な場合の6日間やそれ以上よりは軽い、中程度の走行妨害に対する処分と見ていい。
岩田は左鞭を2回入れ、騎乗馬を右へ、つまり外へと動かしている。しかし、それは後藤の馬の走行を意図的に妨害しようとしたものではないし、2年前のNHKマイルのそれなどに比べると横方向への動きも小さい。
なるほど、走行妨害の程度からすると、妥当な処分なのかもしれない。が、後藤の受けた被害の大きさを考えると、どうも釣り合わないように思われる。
「被害の程度」と「処分の重さ」のバランスは?
昨年、日本でも降着ルールが変わり、その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していたと裁決委員によって判断された場合のみ、加害馬は被害馬の後ろに降着とされるようになった。それまでは、その走行妨害が被害馬の競走能力発揮に重大な影響を与えたと裁決委員によって判断されたら降着となっていた。また、走行妨害によって被害馬が落馬・競走中止した場合、加害馬は失格になった。
現行のルールでは、「被害の程度」と「処分の重さ」は直接関係なくなってしまったわけだが、やはり、今回のように落馬を誘因した場合は、失格か、それに準じる処分としないと、再発(もう再発してしまったのだが)を抑止する力にはなり得ないのではないか。
だからといって、岩田ひとりを悪者にして、今回のようなケースをいかに厳罰化するかを論じるのも、どうかと思う。
確かに、岩田は、ジェンティルドンナに騎乗した2012年のジャパンカップでオルフェーヴルに馬体をぶつけ2日間の騎乗停止になったり、ロードカナロアに乗った昨年の安田記念の直線で斜行し過怠金10万円を科されたりと、激しいプレーが目立つ。
しかし、彼が今回した程度の斜行は、誰でもする可能性がある。
また、岩田も後藤も一流である。あれだけ接近してのせめぎ合いになるのは、彼らが微細なコントロールで僅かな隙間をすり抜ける技術に自信を持っているからだろう。
だが、「危険と隣り合わせなのだから仕方がない」で済ましていいものか。
ここだけで答えを出せるものではないが、ひとりの騎手の命が危険にさらされたのだから、問題にしていくことは必要だろう。