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スキー・スノボ人口が20年で6割減!
選手も懸念する、先細りと対応策。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShinya Mano/JMPA

posted2014/03/30 10:30

スキー・スノボ人口が20年で6割減!選手も懸念する、先細りと対応策。<Number Web> photograph by Shinya Mano/JMPA

ソチ五輪で表彰台に日本人2人が上がったスノーボードハーフパイプ。頂点の高さを維持するためには、裾野の広さが絶対不可欠だ。

 ソチ五輪ではスキー・スノーボードの活躍が目を引いたが、オリンピックの場にかぎらず、今シーズン、こんなことを言う選手たちの言葉によく遭遇した。

「やりたいと目指してくれる選手たちが出てくれば」

 あるいは、

「もっとジュニアの選手たちが増えてくればいいと思います」

 そこには、競技に打ち込む中で感じ取った危機感が込められている。競技の先細りの懸念である。

 公益財団法人の日本生産性本部が発行する「レジャー白書」によれば、スキー・スノーボード人口のピークは1993年で、1860万人。2012年には790万人だった、とある(注:1993年の数字はスキー人口としてのもの。スノーボード人口が合算されるようになったのは1997年から)。つまり60%近く減少した計算になる。

 ピーク時の前後には、スキーをモチーフにした映画のヒットなどが後押ししたと言われるスキーブームが起こり、若者を中心に年々スキー場に足を運ぶ人の数が増加していた。だが、ブームは結局ブームに終わることになった。

「選択と集中」でソチでは結果を出したが……。

 人口の減少はスポンサーであるメーカーの業績不振などをもたらし、全日本スキー連盟の収入の減少にもつながった。すると、代表レベルの選手の強化費も減らさざるを得なくなっていった。

 それが理由の一つとなり、ソチ五輪は代表選考基準の根本の考え方を変更した。従来は、国際スキー連盟によるオリンピック出場のための基準をクリアし、各種目から推薦のあった選手は、おおむねオリンピックの代表に選ばれていた。だがソチでは、代表になれるのは、連盟として独自に設けたより高い基準を突破した選手に限る、としたのだ。

 一方で、強化指定のカテゴリーでも最上位の特Aを設置。強化費用を優先的にあてることで、サポートを厚くした。「選択と集中」という方向を採ったという言い方もできる。

 それがソチ五輪での好成績の要因であると考えられる。

 ただし長い目で見れば、競技全体の土台である人口の減少は、決して見過ごしていい問題ではない。

 その理由のひとつは選手の言葉にもあった、次代を担う選手たちの減少の問題。競技人口そのものが先細りしていけば、将来、競技レベルまで低下しかねない。その種目そのものの衰退になる可能性もある。

【次ページ】 五輪選手も練習するような、大型拠点の閉鎖。

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